USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.1(1995年冬発行)

日本化学会 第68秋季年会(含連合討論会)/化学関係学協会連合協議会研究発表会
/中部化学関係学協会支部連合協議会秋季大会 合同大会 講演予稿集

(1993年11月)

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高分子樹脂と真空紫外光(172nm)の光反応
Photocemical reaction of synthetic resins with Vacuum Ultra Violet(172nm)

ウシオ電機(株)・技術研究所 松島竹夫・五十嵐龍志・平本立躬
Research &Development. Ushio Inc. Matsushima, Takeo;Igarashi, Tatsushi;Hiramoto, Tatsumi

はじめに

低密度ポリエチレンと紫外線(≧185nm)の反応は、そのポリマー鎖内に不純物として含まれるカルボニル基(O=CR2)からの一酸化炭素(CO)の脱離から始まる1)。しかし、一般的にはカルボニル基は微量にしか含まれないため、ほとんど反応は観測されない。本報告では、光源に波長172nmの光を放射するXeエキシマーランプを用い、低密度ポリエチレンに光照射を行い、その時のラジカルの観察を行った。

実験

低密度ポリエチレンを3×40×.8に成形し合成石英管(外径5mm、肉厚0.7mm)に挿入し、内部を10-3Paとした.バリア放電Xeエキシマランプ(20Wタイプ、ウシオ製)から放射される172nmの光を-170°Cに冷却された試料に合成石英製ジュワー(日本電子,ESR用)及び、試料管の合成石英を通して照射した。光照射された試料はESR(日本電子)にてラジカルを観測した。

結果

図1(a)にスペクトルを示す。8本のラインが観測されている。このことは、カルボニル基の介在なしにポリマーと反応していることを示している。また、これは電子線を-196°Cで照射した場合に得られる6本のラインを持つ水素脱離型のアルキルラジカル(-CH2CH・CH2-)のスペクトル(図1(b))とは異なり、むしろ8本のピークを持つ主鎖切断型のアルキルラジカル(-CH2CH・CH3)(図1(c))に類似している。172nmの光はポリエチレンの主鎖であるC-C結合を直接切断する可能性を示唆している。

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