光技術情報誌「ライトエッジ」No.1
付属資料
(1995年冬発行)
誘電体バリア放電エキシマランプ内蔵の
エキシマ光照射装置
光化学の新分野を拓く「実用性」
光は、クリーンでコントロールがしやすい特質のほかに、非常に強いエネルギーをもっており、その波長が短くなるほどエネルギーが強いことは、よく知られております。
これらのことから、波長の短い領域に属する紫外線エネルギーは、化学的エネルギー源として、半導体の製造、樹脂や塗料・インキの硬化・乾燥、光洗浄、光殺菌、光合成・分解など、既に幅広いハイテク分野で実用化されております。いわゆる「光化学(Photo Chemical)」の分野です。
このために、よりエネルギーの強い、より短波長の紫外線が求められるのは当然ですが、合目的で効率のよい紫外線光源がないために、理論的・実験的には、新しい利用と有効性が実証されていながら、実用化に至っていない分野が数多くあります。
この短波長の紫外線を発生する光源は、既に「エキシマレーザ」と「マイクロ波放電によるエキシマランプ」が開発されているものの、「価格・サイズ・寿命・光の特性」などの面で、それぞれ多くの課題が残されており、光化学の新しい可能性に向けて、より効率が高く、より実用性に優れた光源が望まれておりました。
単一波長の光を選択的に発生
今回開発した新光源「誘電体バリア放電エキシマランプ」は、3種類です。
これらは、従来のランプと全く異なる発光メカニズムを持ち、中心波長がそれぞれ172nm(ナノメータ)、222nm、308nmという短波長の紫外線領域で、しかも線スペクトルに近い単一波長の光を、選択的に高効率で発生します。
また、低価格・コンパクトサイズであり、寿命も格段に延びるなど、極めて実用性の高い特長を、数多く備えております。
新しい利用分野
当社では、既に当新光源を用い、世界で初めてランプによるテフロン表面の親水性処理の成功や、ポリエチレンフィルムの染色性処理、PETフィルムの表面改質などの研究成果をおさめております。
これらのことから、今回発売する新光源「誘電体バリア放電エキシマランプ」内蔵の「エキシマ光照射装置」が、プラスチックスの無公害型表面改質、公害物質(フロン、トリハロメタン、NOx)の光分解除去をはじめ、半導体分野での光CVDや精密光洗浄など、ハイテク分野での幅広い研究開発に貢献できるものと期待しております。
誘電体バリア放電エキシマランプ
発光原理
ランプは石英ガラスの二重構造になっており、内管の内側に金属電極(アルミ蒸着電極)、外管の外側に金属網電極がそれぞれ施されています。また石英ガラス管内には、放電ガスが充填されています。
この電極に交流の高電圧を印加すると、2つの誘電体(石英ガラス)の間で、細い針金状の放電プラズマ(誘電体バリア放電)が多数発生します。
この放電プラズマは、高エネルギーの電子を包含しており、かつ瞬時に消滅するという特徴をもっています。
この放電プラズマにより、放電ガスの原子が励起されて瞬間的にエキシマ状態(Xe2*、KrCl*、XeCl*)となります。このエキシマ状態から元の状態(基底状態)に戻る時に、そのエキシマ特有のスペクトルを発光(エキシマ発光)します。
発光スペクトルは、充填された放電ガスの組成によって設定することができ、今回開発した172nm、222nm、308nm以外の126nm、146nmなども、同一の原理で発光させることができます。
特長
- ●従来の方法によるランプでは不可能な「短波長の紫外線を、しかも単一波長」で発生。
- ●電力から光エネルギーへの変換効率が高い。
誘電体バリア放電は、高エネルギーを持った電子を高効率で発生し、しかもガスの温度が低いために、キセノンエキシマを高効率で生成することができます。(変換率:10%) - ●用途に応じて、ランプ形状の自由度が大きい。
誘電体バリア放電エキシマランプは、円筒外部放射形、円筒内部放射形、円筒ヘッドオン型、平板状放射形などの放射形状そのものから、発光部など、さまざまなランプ形状が可能です。 - ●長寿命、小型軽量、低価格タイプ。
既に開発されている「マイクロ波放電のエキシマランプ」にくらべ、寿命は5倍以上であり、価格も「エキシマレーザ」にくらべ10分の1以下。また、サイズもシンプルな発光方式のために、格段にコンパクトになります。
用途
- ●プラスチックの表面改質
- ●ガラス、金属、Siウェーハ、プラスチックスのUV/O3洗浄
- ●光CVD(Photo Chemical Vapor Deposition)
- ●水処理
- ●紫外線硬化(UV Cure)
- ●特殊物質の合成(ビタミンD他)
- ●特殊物質の分解(フロン、NOx他)
仕様
外観図
エキシマ光照射装置
現在発売中のエキシマ光照射装置は、中心波長が172nm(Xe2*)、222nm(KrCl*)308nm(XeCl*)の3種類の「誘電体バリア放電エキシマランプ」をそれぞれ内蔵した3タイプです。