USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.12(1998年2月発行)

■電子材料97年10月号

(1997年10月)

〈全冊特集〉多様なニーズに応えるプリント配線板

製造・プロセス編 分割投影露光装置
「UX-5023SM」

土屋純一

BGA,CSP,MCMで用いられるビルドアップ法によるプリント配線板の露光を目的とした分割投影露光装置「UX-5023SM」の特徴を,従来方式である一括密着露光装置,プロキシミティ露光装置との比較で,説明,紹介する。

開発動向

携帯電話,モバイルパソコンなどの移動体通信機器の発展に伴い,これらに使用されるプリント配線板は,高密度化・小型化が進んでいる。このような技術動向により,実装技術は,BGA,CSP,MCMなどの新たな実装形態へと発展し,その中でビルドアップ法の役割が大きくなっている。

当社では,このような高密度化,小型化の流れに対応するべく,TAB市場,半導体市場で実績のある投影露光方式を採用したプリント配線板用分割投影露光装置「UX-5023SM」を開発した。

以下に,本機の特徴,今後の方向について述べる。

特徴および仕様

UX-5023SM の主要な仕様を表1,外観を写真1に示す。本装置の特徴は,以下の通りである。

写真1 分割投影露光装置UX-5023SM

表1 UX-5023SM 主要仕様

  • (1) 有効露光範囲150mmΦ,解像力9µm,倍率1:1のテレセントリックレンズを使用している。
  • (2) 1 ショット最大106mm□,または,150mmΦの内接する長方形の露光を行う。
  • (3) 各ショット毎に,アライメント精度±3µm の画像処理オートアライメントを行う。
  • (4) 最大250×250mmのプリント配線板の露光が可能である。

以下に,詳細を述べる。

1. マスクダメージのない深い焦点震度の投影露光方式

(1) 従来のプリント配線板に仕様される露光方は,発散光による密着露光,あるいは平行光によるプロキシミティ露光であった。これら従来の露光方式では,マスクにレジストなどの異物が付着し,プリント配線板のパターン欠損による歩留り低下が問題となっていた。ところが,投影露光方式では,マスクとワーク(プリント配線板)が,投影レンズを介し完全に分離されているため(図1),前述のパターン欠損は皆無となる。

また,密着露光方式あるいはプロキシミティ露光方式ではパターン欠損を回避するため,頻繁にマスクの洗浄が必要になり,生産性低下,マスクダメージによるランニングコストの上昇が問題であった。投影露光方式では,マスク洗浄は不要となり,マスクは半永久的に仕様可能となる。これはビルドアップ基盤に求められるファインパターンで,高価な石英マスクを使用できることを意味している。

(2) 投影露光方式は,焦点深度が深い(±20~100µm程度)という特徴も持つ。これは,パターン形成やビアホール形成に使用するドライフィルム,液状レジストなどの厚膜レジストを露光する場合,有効である。なお,この特徴は,プリント配線板につきものの,反り,うねりに対応しやすいことも意味している。ドライフィルムを例にした焦点深度のデータを,写真2に示す。

(3) 1:1テレセントリックレンズをつかうということは,マスクの原画パターンを1:1の等倍で,ワークに結像させること,ワークに入射する光は平行光であることを意味している。

2. ファインパターンの重ね合わせ露光に対応した分割露光方式

(1) 従来の密着露光方式,プロキシミティ露光方式では,大形のプリント配線板を,全面一括で露光する方式がとられてきた。これは,生産効率を考えれば当然の処理方法であった。

ところが,ビルドアップ基板では,高密度化対応で40~50µmΦのビアホール形成,30~50µmL/S の配線パターン形成が求められている。これらのファインパターンを重ね合わせる際のアライメント(位置決め)精度が,従来の一括露光方式では大きな問題となってくる。なぜならば,プリント配線板では,プロセス上の問題により,基盤が100µm 以上伸び縮みすることが知られており,この大きな伸縮のある基板で,50µmΦのビアホールを精度よく位置決めし,露光することは,従来の一括露光方式では困難だからである。

そこで,分割露光という手法が意味をなしてくる。

大形のプリント配線板全体では,100µm以上ある伸縮も,小さいエリアに限定して見た場合には,伸縮は大幅に軽減される。つまり,基板の伸縮にほとんど影響を受けない小さいエリア(~106nm□)で位置決めし,そのエリアだけを露光することで,この問題は解決される。ワークステージをX-Y方向に駆動させ,繰り返し位置決め~露光を行い,プリント配線板の全面を露光する方式が,分割露光方式である(図2)。

(2)UX - 5023SMの場合,投影露光方式を採用しているため,1ショットの露光エリア内で,プリント配線板の伸縮に対応して,最大±0.1%の倍率変更(ズーム調整)も可能である。

3. 独自のアライメント方式

従来の密着露光方式,プロキシミティ露光方式では,マスクワーク間の干渉稿とワークのアライメントマークをマスク越しに観察することで,ワークのアライメントマークのコントラスト低下が,アライメント精度に影響を与えていた。

ところが,UX-5023SMでは,独自のTTL非露光波長アライメント方式(図3)を採用しているため,ワークマークをCCDカメラで,ダイレクトに観察できるようになり,鮮明なワークマークで,高精度なアライメントを実現している。

図3 TTL非露光波長アライメント方式

また,この方式では,マスクの大半が遮光のため黒く塗りつぶされているケースでも,ワークマークを問題なく認識できる。

4. キーパーツ内製による信頼性向上

前述の投影レンズを含め,半導体市場,液晶市場で実績のあるランプ,ランプ電源,ランプハウスなど,露光装置に必要不可欠なキーパーツをすべて内製しており,装置全体での保証ができ,高い信頼性を確保している。

課題と今後の方向

ここまで,UX-5023SMの特徴,優位性を述べてきたが,課題がないわけではない。それは,分割露光のため,一括露光に比べ,処理スピード(スループット)が遅くなることである。高スループット化の一環として,有効露光範囲200mmΦの投影レンズ(UPL-38EX)を搭 載した新バージョン装 置「UX-5038SM」を現在開発中である。UX-5038SMは,500×600mmのプリント配線板を,12ショットで位置決め~露光する。各ショットをオートアライメントで位置決めすることで,露光時間を除き,1分/枚のスループットを目標にしている。

また,さらなる1ショット当たりの露光範囲の拡大,高解像力化,高アライメント精度化などの要求も今後高まってこよう。これら市場ニーズを先取りし,早め早めの開発を行うよう努力していきたい。

ロール to ロール基板への対応

なお,これまで,リジッド基板用装置の話をしてきたが,T-BGAを主用途としたロール材(FPC)の露光装置の引き合いも増えてきた。リジッド基板同様,露光方式に投影露光を採用,搬送はロールto ロールで自動搬送するタイプ「UX-4023SR」もラインナップとして揃えている(写真3,表2)。

写真3 ロール to ロール基板用投影露光装置「UX-4023SR」

表2 UX-4023SR 主要仕様

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