USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.17

Electronic Journal ’99/3月号[1999年3月15日]

(1999年7月)

特集●CSP・BGA・ベアチップ実装
《ウシオ電機のプリント配線板用露光装置》
次の主役はステップ&リピート方式
フレキシビリティと高精度で挑む

ウシオ電機(株)システム事業部 土屋純一

ウシオ電機では、ステップ&リピート方式のプリント配線板用分割投影露光装置「UX-5038SM」を開発した。急速に普及に向かいつつあるビルドアップ基板のビアホール形成に対応する。分割露光によって、基板の伸縮の影響を最小限に抑え、パターンの重ね合わせずれを回避できる。本稿では、同機の特徴、仕様とともに、今後の課題について述べる。

●ビルドアップのニーズに応える

携帯電話、ノートPC などモバイル機器の小型・軽量化、高速・高機能化に伴い、半導体デバイスも高集積・高速化している。実装技術も、QFP からBGA、CSP、MCM と新たな形態へと発展してきた。これらのデバイスを搭載するプリント配線板として急浮上しているのがビルドアップ基板だ。微細化、高密度化を実現する基板として、その役割が大きくなっており、急速に普及に向かっている。

我々は、これらのトレンドに対応すべく、ステップ&リピート方式を採用したプリント配線板用分割投影露光装置「UX-5038SM」を開発した。分割露光によって、基板の伸縮の影響を最小限に留め、パターンの重ね合わせずれを回避することが開発の主眼である。

図1 「UX-5038SM」の露光ステージ

●分割露光の開発コンセプト

従来の一括プロキシミティ/コンタクト方式では、生産効率を考え、大型のプリント配線板を全面一括で露光する方式が採用されてきた。ところが、ビルドアップ基板は高密度化対応で、40~50µm径のビアホール形成、30~50µmL/Sと、微細な配線パターン形成が求められている。直近では、ビアホールに対するランド径を小さくし、ランド間の配線本数を増やしたいという要求がある。

これらのニーズに対応するため、アライメント精度を向上させる必要があるが、従来の一括露光方式では困難だ。プリント配線板はプロセス上の問題で、基板が±100µm以上伸び縮みしてしまうのがその理由である。この大きな伸縮のある基板で、上述のファインパターンを精度良くアライメントし、露光することは、従来の一括露光では限界がある。

そこで、分割露光が浮上してくる。大型のプリント配線板では100µm以上ある伸縮も、小さいエリアに限定して見た場合には、伸縮は大幅に軽減される。つまり、基板の伸縮に影響を受けない小さいエリア(~141mm 角)でアライメントし、そのエリアだけを露光することで、この問題は解決することになる。ワークステージをX-Y 方向に駆動させ、繰り返しアライメント~露光を行い(ステップ&リピート)、プリント配線板全面を露光する方式である。

UX-5038SMの場合、投影露光方式を採用しているため、1ショットのエリア内で、プリント配線板の伸縮に対応し、最大±0.1%の倍率変更(スケール調整)も可能。

さらに分割露光は、結果的にマスクサイズを小さくでき、後述する微細化対応の石英マスクのイニシャルコストの低減に役立つ(7~9インチ角)。

●マスクダメージをなくした投影露光

従来のプリント配線板に使用される露光方式は、拡散光あるいは平行光による密着露光が主流であった。この従来方式では、マスクにレジストが付着(液状レジスト、ソルダーレジストの場合)するため、マスクダメージ回避(マスク交換)によるランニングコスト上昇、基板のパターン欠損による歩留り低下が問題となっていた。

UX-5038SM は投影露光方法のため、マスクと基板が投影レンズを介し完全に分離している。そのため、マスクは半永久的に使用可能で、基板のパターン欠損は皆無である。このメリットの意義は大きく、微細化対応で求められる石英マスクの使用を現実化させることになろう。

投影露光方式は、焦点深度が深いという特徴を併せ持つ(±50~100µm)。これは、パターン形成やビアホール形成に使用するドライフィルムレジスト、ソルダーレジストなどの厚膜レジストを露光する場合に有効である。また、この特徴は、プリント配線板の反り、うねりに対応しやすいことも意味している。

●独自のアライメント方式

従来の密着露光方式では、基板のアライメントマークをマスク越しに観察することで、基板のアライメントマークのコントラスト低下が、アライメント精度に影響を与えていた。

UX-5038SMでは、独自のTTL非露光波長アライメント方式を採用し、基板のアライメントマークをCCDカメラでダイレクトに観察できるようになり、鮮明なアライメントマークで高精度なアライメントを実現している。

図2 UX-5038SM の露光(自動アライメント搭載)

表1 UX-5038SM の主な仕様

●量産対応の開発もスタート

プリント配線板の高密度化、ファインパターン化と、かつての半導体プロセスを重ね合わせてみれば、分割投影露光方式によるリソグラフィが採用されるのは必然的な流れであるといえよう。我々は、半導体やTAB露光の市場で、投影露光方式の光学系には十分な実績を積んでいると自負している。ユーザーの要望に合わせた解像度、露光面積などにも対応が可能である。

開発試作レベルでの採用はすでに始まった。オートスケール(倍率変更の自動化)、マスキングブレード(露光エリアの任意可変)などの高機能化の開発にも着手している。量産レベルでの使用に向け、さらなるブラッシュアップを進める。

Copyright © USHIO INC. All Rights Reserved.