USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.18(2000年3月発行)

ディスプレイ アンド イメージング 1999, Vol.7
pp-291-295

(1999年7月)

プロジェクター用メタルハライドランプ
Short-Metal Halide Lamp for Projectors

東 忠利a†      成田光男a
受付:1998年12月28日・受理:1999年2月16日
Higashi Tadatoshi    Narita Mitsuo 
(c)1999 OPA (Overseas Publishers Association) N.V.
Published by license under the Science
Communications International, K.K. imprint,
part of The Gordon and Breach Publishing Group.
Printed in Malaysia

液晶プロジェクターなどの投写型ディスブレイがビデオ・データ用映像機器として注目されている。これに使用される主要な光源の一つにショートアーク形メタルハライドランプがあり,直流点灯型と交流点灯型との2 種類のランプがある。近年,光学系の進歩に応じ,集光率の向上と大出力化,およびスクリーン照射品質の向上のため,高ワットランプの短アーク化が急速に進展している。ここでは最近のプロジェクター用メタルハライドランプの代表的な特性を紹介する。

キーワード:メタルハライドラレプ・ショートアーク・液晶プロジェクター・大出力・ランブ特性

Projection display devices like the LCD projector are widely seen in the market as the dataprojectorand the video-projector. The short-arc metal halide lamp ia an important light source for projectors. There are two kinds of metal halide lamps: alternative currentoperating lamps and direct current-operating lamps. Recently large wattage-metal halide lamps of very short arc have been developed for high light-output, high light-utilization and high light-quality. The characteristics of these lamps are described.

1. はじめに

メタルハライドランプは高効率と高演色性を兼ね備えた特性のゆえに,1989年の液晶プロジェクターの製品化当初から光源として便用されている。一般照明用メタルハライドランプのアーク長が約10mm以上であるのに対して,プロジェクター用ランプでは当初は150Wランブでアーク長5mm程度,250Wランプでアーク長7mm程度にショートアーク化したメタルハライドランプが矩形波交流点灯で使用された。

その後の高輝度化の要請に対し,一般に交流点灯ではアーク長の短縮や高入力化に伴う短寿命化が避け難い。そこで短アーク長においても長寿命化できる方法として直流点灯型メタルハライドランプが開発された1,2)。一方,交流点灯型メタルハライドランプも一部に長寿命化の改良がなされ,高効率の特性を生かした用途に採用されている。

最近,100W~150Wクラスのプロジェクター用超高圧型水銀ランプが開発され,入力電力280W以下のメタルハライドランプは,これに置き換わりつつあるが,入力電力280W~400Wクラスの高出力メタルハライドランブは今後とも高照度プロジェクター用として必要な光源と思われる。ここでは,これらの高出力の直流点灯型および交流点灯型ショートアークメタルハライドランプに重点をおいて解説する。

2. 直流点灯型メタルハライドランプと交流点灯型メタルハライドランプの比較

発光物質として稀土類ハロゲン化物を封入した交流点灯型メタルハライドランプでは点灯中に石英ガラス放電管の内表面に白濁(失透とも呼ばれる)が発生するが,白濁はアーク長の短縮や高入力化による高輝度化により一層激しくなる。白濁は稀土類元素の作用により石英ガラスの表面にクリストバライトと呼ばれる石英の微結晶が発生することにより光が散乱される現象であるが3),この石英放電管での光の散乱は発光部の増大に相当し,光の利用率を低下させる。また放電管の黒化と白濁とが同時に発生すると光の利用率の大幅な低下を招く。この白濁および黒化の発生を抑制する一方法として直流点灯型メタルハライドランプが開発された4)。直流点灯は発光物質の稀土類元素を陰極側に引きつけることにより白濁と黒化の発生とを同時に抑制しようとするものである。また直流点灯には点灯回路のコスト低減の効果もある。

しかし直流点灯は発光物質を偏らせるため,初期効率が低下し,また放電管内の色むらを増大させるマイナス効果もあるが,後者の色むらはオプティカルインテグレータの採用で問題のないレベルに低減できる。従って交流点灯ランプの長所は初期効率が高いことである。

3. 直流点灯型メタルハライドランプ

直流点灯型メタルハライドランプは当初アーク長3mmで125W,155W,250Wなどのランプが製品化されたがl),更に高輝度化への要請に依って短アーク長化が計られ,アーク長当たりの入力電力を増大したランプが実用化された5)。Table 1に最近の代表的なメタルハライドランプの特性をまとめる。

これらランプの主要な用途を簡単に紹介する。

  • (1)DC 125Wメタルハライドランプ(アーク長2.5mm):安価なポータブルプロジェクターヘの応用に適する。
  • (2)DC 280W メタルハライドランプ(アーク長1.6mm):高輝度ねらいであり,反射型画像パネル系への応用に適する。
  • (3)DC 330Wメタルハライドランプ(アーク長2.4mm):透過型l.3インチLCDブロジェクタ一系への応用に適する。
  • (4)DC 370Wメタルハライドランプ(アーグ長3.3mm):透過型1.8インチ以上のLCD プロジェクター系への応用に適する。
  • (5)DC 400Wメタルハライドランプ(アーク長4.7mm):透過型3インチ以上のLCDプロジェクター系への応用に適する。

Figure 1 にランプーリフレクターシステムを図示する。Figure 2 にDC 280Wランプ(アーク長l.6mm)の分光エネルギー分布を示す。

Table 1 Characteristics of short-arc metal halide lamps for the projector.

Fig. 1 A dc-operating metal halide lamp with a reflector.

Fig. 2 The spectral energy distribution of a dc-operating 280 W metal halide lamp.

4. 交流点灯型メタルハライドランプ

交流点灯型メタルハライドランプには初期効率が高い特徴があり,高出力機種または簡易な機種 に使用されている。

現在も使用されているランプには150W(アーク長3mm),250W(アーク長3mm),400W(アーク長5mm)などがある。Table 1 の下段に交流点灯型メタルハライドランプの特性例を示す。Figure 3 にAC 250Wランプの分光エネルギー分布を示す。

Fig. 3 The spectral energy distribution of a ac-operating 250 W metal halide lamp.

5. ショートアークメタルハライドランプの用途について

最近の超高圧水銀ランプ100W~150Wの製品化により,中級プロジェクターには超高圧水銀ランプが使われる傾向がある。しかし大スクリーン光東を要求される機種には大出力のメタルハライドランプが適している。Figure 4は超高圧水銀ランプと代表的なメタルハライドランプについてetendue(集光面積と立体角の積)に対する光束量を示す6)。(なお,Figure 4 は十分大きい反射鏡を使って測定しているため,実際の応用においては入力電力の大きいランプは焦点距離の大きい反射鏡を使う必要があり,Figure より不利になる傾向がある。またPBS(偏光ビームスプリッター)を使用しない同一条件のプロジェクターではetendue=Ω・Sは2倍になる。)

Figure 4からも分かるように超高圧水銀ランプは入力電力に比較して同じetendueに対する集光率が良いことが分かるが,メタルハライドランプでも約2倍以上の電力のランプを使えば高いスクリーン光束を得られることが分かる。

また,少なくとも現在のところ,メタルハライドランプの方が低価格のため,安価なプロジェク夕一にはメタルハライドランプを使うことも考えられる。

Fig. 4 Etendue vs light flux of representative metal halide lamps and supper-high-pressure mercury lamps.

6. おわりに

プロジェクター用光源にはメタルハライドランプと超高圧水銀ランプの他にも,ハロゲンランプとキセノンランプとがあり,それぞれプロジェクターの特性や目的によって使い分けられていくものと思われる。特にメタルハライドランプには500W級ランプの開発や400W級ランプのアーク長の短縮など,開発,改良余地が多分にあり,今後とも適宜に使われていくものと考えられる。

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