USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.20(2000年12月発行)

表面実装マガジン
2000年 CSP/BGA/FC
技術のすべて

(2000年9月)

BGA/CSP基板用
投影露光装置

――ビルドアップ基板用分割投影露光装置について、そのコン
セプトおよび方式上の特徴について述べる――
……………………………………………………………………ウシオ電機 高野 格

当社では以前より半導体やTABテープの市場で、投影露光方式の露光装置を展開しており、ユーザーの要望に合わせた装置製作において実績を積んできたと考えている。

本稿ではBGA/CSPなどの半導体パッケージのプリント配線板用投影露光装置のいくつかについて特徴、仕様、課題を従来露方式との比較で説明、紹介する。

リジッドプリント配線板用分割投影露光装置

(1)概要

当社では、BGA、CSP、MCMなどで急速に普及しているビルドアップ基盤の製造に対応するため、リジッドプリント配線板用露光装置として、ステップ&リピート方式の分割投影露光装置「UX-5038SC シリーズ」を製品化している。

大型基盤を分割露光すること、投影倍率を変えることによりワーク基板の伸縮の影響を最小限に抑え、パターンの重ね合わせズレを回避することが可能な露光装置である。

写真に分割投影露光装置UX-5038SCの外観を示す。

表1に分割投影露光装置UX-50385Cの主要仕様を示す。

(2)分割露光のコンセプト

従来のリジッドプリント配線板用露光装置はそのほとんどが一括ブロキシミティ/コンタクト方式で、生産効率を考え、大型のプリント配線板を全面一括で露光する方式が採用されてきた。ところが、ビルドアップ基板は高密度化対応で、40~50µm径のビアホール形成、30~50µmのL/Sと、微細な配線パターン形成が求められ、ビアホールに対するランド径を小さくし、ランド間の配線本数を増やしたいという要求がある。

これらのニーズに対応するため、アライメント精度を向上させる必要があるが、従来の一括露光方式では困難である。プリント配線板はそのプロセス上の問題で、500x600mm程度の基板では±100µm以上伸び縮みしてしまうのがその理由である。

この大きな伸縮のある基板上で、上述のファインパターンを精度良くアライメントし、露光することは、従来の一括露光では限界がある。

そこで、当社が提案するコンセプトは分割露光方式である。大型のプリント配線板全体では100µm以上ある伸縮も、小さいエリアに限定して見た場合には、伸縮は大幅に軽減される。小さいエリアでアライメントし、そのエリア内でプリント配線板の伸縮に対応し最大±0.1%の倍率変更(スケール調整)したうえで露光することでこの問題は解決できる。

この倍率変更機能を発展させ、アライメントマークのピッチから基板伸縮を自動計測し倍率を調整しアライメントズレを最小化するオートスケール機能も実用化している。

その上で、ワークステージをX-Y 方向に駆動させ、繰り返してアライメント~露光を行い(ステップ&リピート)、プリント配線板全面を露光する方式である。図1に分割投影露光方式の特徴を示す。

(3)マスクダメージをなくした投影露光装置

従来のプリント配線板に使用される露光方式は、拡散光あるいは平行光による密着露光が主流であった。この従来方式では、マスクにレジストが付着(液状レジスト、ソルダーレジストの場合)するため、マスクダメージ回避(マスク交換)によるランニングコスト上昇、基板のパターン欠損による歩留り低下が問題となっていた。

UX-5038SCは投影露光方式のため、マスクと基板が投影レンズを介し完全に分離している。そのため、マスクは半永久的に使用可能で、基板のパターン欠損は皆無である。

さらに分割投影露光では、1 露光エリアが小さいため結果的にマスクサイズを小さくでき(7~9インチ角)、パターン欠損が生じないことと相まって微細化対応に有効な石英マスク使用を実現化し、マスクイニシャルコストの低減にも役立つ。

(4)焦点深度

当社の投影露光方式は、焦点深度が深いという特徴を持っている(±50~100µm)。テレセントリック投影レンズを使用しているため、投影面高さが変っても寸法変化がない。これは、パターン形成やビアホール形成に使用するドライフィルムレジスト、ソルダーレジストなどの厚膜レジストを露光する場合に有効である。またこの特徴は、ワークの反り、うねりに対応しやすいことも意味している。

これは他の露光方式にはない投影露光方式の特徴であり、コンタクト/プロキシミティーの場合、レジスト表面にしか設定できないフォーカス面(マスクパターン面)が、焦点深度の範囲内で調整可能である。

(5)独自のアライメント方式

従来の密着露光方式では、基板のアライメントマークをマスク越しに観察することで、基板のアライメントマークのコントラスト低下が、アライメント精度に影響を与えていた。

UX-5038SCでは、独自のTTL 非露光波長アライメント方式を採用し、基板のアライメントマークをCCDカメラで直接に観察できるようになり、鮮明なアライメントマークで高精度なアライメントを実現している。

図2はマスクとアライメント顕微鏡視野の相対位置をキャリブレーション検出する方法である。露光波長にてマスク像をワークステージのミラーに投影し直接顕微鏡で観察する。

図3はワークマーク検出時の状態である。アライメント顕微鏡から非露光波長の光が別途導入されるため、ワークマークのみを単独で検出することが可能である。

ワークマークを検出した後ワーク側を移動してアライメントする。マスクとアライメント顕微鏡は短時間では相対位置は変化しない。従ってTTL非露光波長アライメントが可能となる。

(6)処理能力

処理能力はアライメントモードにもよるが、1ショットあたり最短で1.5秒(実力値)となっている。配線板1 枚の片面あたり、処理時間=(アライメント時間+露光時間)xショット数+ワーク交換時間となり、ワーク交換時間はおおよそ10秒である。

310x510mm程度の配線板で片面9ショットとすると、1枚あたり約24秒(露光時間を除く)となる。現在はさらなる高速化へ取組んでいる。

(7)今後の方向性

リジッドプリント配線板用露光装置の場合、高密度化/ファインパターン化の流れをかつての半導体プロセスを重ね合わせてみれば、分割投影露光方式によるリソグラフィが採用されるのは必然的な流れであるといえよう。とくに高い重ね合わせ精度が要求されるビルドアッププリント配線板においては、高い歩留まりを得ることができ、露光時の精度が向上することにより露光以外のプロセスにおけるマージンが増加する。

今後、フリップチップ実装等のより高精度な配線の露光が必要となるような技術トレンドの中で、分割投影露光の技術は必須の技術になっていくと考えている。

フレキシブルプリント配線板用露光装置

(1)概要

当社では、フレキシブルプリント配線板のロール状ワークについても、BGA/CSP/COF用投影露光装置として、有効露光サイズでΦ150mmとΦ200mmの2種類の投影レンズを搭載した露光装置を製品化している。

同装置の特徴、仕様について述べる。

(2)マスクダメージをなくした投影露光方式

フレキシブルプリント配線板用露光装置においても、前述のリジット配線板用と同じ投影レンズを使用しており、メリットも同様である。

(3)ロールtoロール基板への対応

ロール状ワーク対応の露光装置として、対象とするワークはPiフィルム+銅箔のフレキシブルプリント配線板で、ワーク巾は概ね150mmクラスと250mmクラスに大別できる。露光サイズとワーク幅の関係は、Φ200mm(角141mm)露光有効で巾150mmクラスワークに1列露光する場合と、Φ150mm(角101mm)露光有効を巾250mmワークに2列露光する場合とがあり、2列露

光方式には、初めに片側1列を露光しリールを掛けかえてさらにもう1列露光する方法と、露光部でワークを搬送方向と直交方向にステップさせ、ワークの掛けかえなしに1 回のワーク流しで2列を露光する方法とがある。

表2にロール材用Φ200mm 露光有効の投影露光装置の主要仕様を示す。

図4に投影露光装置「UX-4038SR」の外観図を示す。

(4)アライメント方式

基本的アライメント方式はリジッド配線板用露光装置と同様である。ただし、ロール状フレキシブル配線基板ゆえの問題もある。ロール状ワークは常に露光部にワークが存在するため、マスクと顕微鏡視野の相対位置キャリブレーション検出する際にワークが邪魔になる、このためワークを一時退去させる機構を搭載し対応している。

(5)処理能力

処理能力は大きなファクターとして考えられており、当社投影露光装置では、最大1ショットあたり5~6秒程度(露光時間を除く)のタクトタイムを持つ高速装置を製品化している。装置仕様としては2局化しつつあり、1ショットあたり5~6秒と言う装置はワーク、アライメントの方式やマーク構造/配置等の使用条件を限定したタイプで、TAB露光装置に近い装置構成のものである。

他方、多様なワーク構造、アライメント方式、マーク配置等に対応できる汎用機的性格を持つが、タクトタイムはやや遅く、1ショットあたり8~12秒程度のタイプも存在する。どららを選択するかはユーザー仕様によるが、全体としては高速化優先の方向に進むものと考えている。

(6)搬送方式およびノーテンション露光

一般にロール状ワークの搬送には常時引張りテンションをかけたテンション搬送方式が採用されている。ところが高精度化が進むと露光時のテンションによる伸縮が問題となることが懸念される。

当社露光装置の場合は、TAB用露光装置で培われたノーテンション搬送方式を採用しておりこれらの問題に対してもその影響を排除することができる。

また、ワークの特性によっては搬送安定性を確保するため、どうしても搬送時に張力を掛けておくテンション搬送方式を採用する必要がある場合もあり得る。この場合には搬送時はテンション搬送とするが、露光時の露光部についてのみノーテンション化させる方式も採用している。

(7)ワークの反り、うねり対策

最近の傾向として、フレキシブルプリント配線板についても表/裏配線化、多層化の傾向が顕著でプロセスも多重複雑化し、プロセスが進行するとワークにかかるストレスも大きくなっており、結果ワークの反り、うねりが大きくなっている。反り、うねりは露光部の吸着固定の際に、吸着不良として現れ、焦点深度が深いとはいえ、最終的には露光性能にも悪影響をおよぼす。

こうしたワークにも対応すべく、弊社露光装置では露光部の吸着ステージ部にワーク押さえなどの吸着補助手段を取付け吸着安定性を確保し、対応可能なワークの幅を拡げる工夫を行っている。

課題と今後の方向

ここまで、投影露光方式の特徴/優位性を述べてきたが、問題がないわけではない。それは投影レンズの有効サイズが限定されている点である。リジッド配線板用であれフレキシブル配線板であれ、より大きな露光有効を持つ投影レンズの開発を要求されており、これは生産能力向上にもつながる重要な要素である。

当社では現在、大型投影レンズ開発作業に着手しており、2001年1月にはΦ250mm投影レンズ搭載露光装置をリリースする計画である。また、投影レンズを使用しているため、他の露光方式と比較して装置イニシャルコストがどうしても高額となる傾向がある。

ユーザーの最終製品価格が抑制される中で、製造設備である露光装置にもコストダウンが厳しく要求されている。設計コンセプト、部品価格、生産体制等を含めた、より一層のコストダウンも今後の課題としてとらえている。これからも市場ニーズを先取りし、御要求にマッチした装置開発に向けて努力を続けていきたい。

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