USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.24(2002年4月発行)

神戸市立工業高専門学校

(2001年11月)

エキシマランプの産業応用

ウシオ電機株式会社
広瀬 賢一

1.はじめに

光化学反応を利用した乾式洗浄、表面改質、光分解、光合成、光CVDなどに用いる光源には、紫外、真空紫外領域のある特定波長の範囲に、高い放射効率を有することが望まれる。重水素ランプやキセノンランプの発光の光出力は多数の線スペクトルあるいは連続スペクトルからなり、狭波長域における放射効率は必ずしも十分ではない。低圧水銀ランプ(以下LPM)は185nmと254nmに線スペクトルを持ち、効率的に優れた光源であるが、環境上問題となる水銀を含んでいる。

誘電体バリア放電を利用したエキシマランプは、特定波長域の光を効率よく放射する光源として実用され、現在も活発に研究、開発が行われている。特に、Xe2*エキシマランプは、これまでの紫外線ランプにない特徴があり、乾式洗浄などの産業用途に用いられ始めている。

2.エキシマランプの構造と特性

我々の開発したXe2*エキシマランプ1)は二重円筒型タイプである。図1参照。放電ガスはXeガスのみで、水銀は含まない。また、このランプに使われている部品は、アルミ製の電極や金属ベースやセラミックベースなどであり、環境上問題となる物質は使っていない。放電容器の外部に配置した電極間に高周波高電圧を印加して放電させると、中心波長172nm半値幅14nmの真空紫外光を放射する。開発当初、Xe2*エキシマランプからのエキシマ光の放射効率は10%程度であったが2)、最近では、電気入力に対するエキシマ光の変換効率が60%を超える報告3)もある。LPMの254nmの放射効率(約75%)に比べると低いが、真空紫外光源としては、これまでにない高い効率を有する。

図1.二重円筒型エキシマランプの概略図

3.産業応用例

シリコンウエハやLCD用ガラス上の有機物を除去する方法の一つにUV/O3洗浄がある。従来はLPMで行われていたが、172nm光は、酸素による吸収が大きく高密度の原子状活性酸素ができることや、光子のエネルギーが大きく有機物の分子結合の切断能力が高いため、処理速度が速く、Xe2*エキシマランプが用いられるようになった。また、172nm光のこれらの特徴を利用して、テフロンやポリエミドなどの樹脂の表面改質や、半導体製造プロセスなどにおけるレジストのアッシング、TEOS(Si(OC2 H54)などを原料とした層間絶縁膜としてのSiO2薄膜の形成、Si表面を直接酸化させることで数nm程度の酸化膜を形成させる技術などの研究も進んでいる。さらに、従来半導体製造プロセスで利用されてきた化学薬品による有機物除去洗浄に対しても、エキシマ光との組み合わせで薬品使用量を低減する検討もさかんに行われている。今後、高効率、高出力ランプの開発に伴い、光化学反応速度(処理速度)が増すことで、他の産業応用への展開が期待される。

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