USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.24(2002年4月発行)

第16回生体機能関連化学部会シンポジウム

(2001年9月)

メタルハライドランプを用いた
癌の光線力学療法

(桐蔭横浜大工1・桐蔭横浜大先端医用工学センター2・ウシオ電機3
古曽部俊之1・徳岡由一2・木村 誠3・涌井史郎2・川島徳道1,2

【緒言】

光線力学的治療(Photodynamic therapy、PDT)とは、腫瘍親和性を有する光増感剤を腫瘍組織に特異的に集積させ、特定波長を有する光線を照射することによって生成する一重項酸素によって選択的に腫瘍組織を壊滅する療法である。これまでPDTには光源としてレーザー光が使われているが、治療面積が小さい、装置が高価で大型などの問題点がある。そこで我々は、レーザー光の替わりに新しく開発したメタルハライドランプを用いて、PTDにおけるメタルハライドランプの効果について検討した。

【方法】

10%のウシ胎児血清を加えたRPMI1640培地で継代したマウス胸腺リンパ系腫瘍細胞EL-4を5x105個/mlになるようにRPMI1640培地を用いて希釈した。希釈した細胞5mlを半径2.5cmのプラスチックシャーレに分取し、10%の5-aminolevulinic acid生理食塩溶液(5-ALA)を所定量加え、暗室で3時間放置後、特定波長の可視光をメタルハライドランプを用いて15、30、60、120、240分間(照射エネルギー:13.95、27.9、55.8、111.6、223.2J/cm2)照射した。照射後、トリパンプルブルー溶液を加え、5分間放置後に血球計算盤を用いて細胞の生死を判別し生存率を求めた。

図1 PDTの原理

図2 メタルハライドランプ

【結果と考察】

Fig.1は630nm付近のランプ光の照射エネルギー変化に伴う生存率の変化を示す。5-ALA無添加系では細胞の生存率の変化は認められなかった。また、5-ALAを添加系では、照射エネルギーが増加するほど生存率は減少、すなわち殺細胞効果は増加し、照射エネルギーが約100J/cm2以上のとき約90%以上が死滅することが分かった。

Fig.2は波長の異なる光線を照射したときの生存率の変化を示す。10µlの5-ALA添加したEL-4に410nm付近のランプ光と630nm付近のランプ光を照射した。同照射エネルギーで比較すると、630nm付近のランプ光より410nm付近のランプ光の方が生存率が低く、殺細胞効果が高いことが分かった。また、410nm付近のランプ光の照射エネルギーが約25J/cm2のとき80%以上が死亡することが分かった。

Fig.3は630nm付近のランプ光を10µlの5-ALA添加したEL-4に15分間連続照射(照射エネルギー:10.44J/cm2)したときと、5分毎に5分間のインターバルをとって照射時間の合計が15分間になるように間欠照射したときの生存率の比較である。図から明らかなように、間欠照射の方が連続照射より殺細胞効果が高いことが分かった。

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