USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.24(2002年4月発行)

電子技術 2001-9臨時増刊号
特集─2001年版CSP/BGA/FC技術のすべて

(2001年9月)

TAB露光装置

~ロール・ツー・ロール投影方式によるTAB露光装置の露光基本原理と特徴、今後の課題・展開などを解説

●ウシオ電機 川北 正人/澁谷 勇

当社は1976年より半導体露光装置用光源部を供給してきた実績を基盤として、1986年にロール・ツー・ロール投影方式のTAB露光装置を開発した。当初は35mm、70mm幅テープ用装置だけであったが、現在では35mm、48mm、70mm、96mm、105mm幅テープまで1台の装置で対応が可能である。また、製品ピッチも当初は100µmピッチ程度だったが、現在では45~50µmピッチ品を量産。さらに30µmピッチ品の試作も開始され、露光後の解像力は7~10µm程度となる。

開発当初の仕様への要求は、①スループットの向上、② 解像力の向上、③ 露光面のクリーン度程度であった。現在ではさらに、④ 多条取り、幅広テープ対応、⑤ 高位置決め精度の要求、⑥ 更なるゴミ対策、⑦ テープ伸縮への対応、⑧ 高解像力化への対応と要求は多様化し、より高度になってきている。

その背景には、主にLCD用ドライバICの実装に使用されてきたTAB実装技術が、半導体パッケージのBGA/CSP分野へも導入が進むなど、アプリケーションの多様化と拡大が考えられる。当初の電卓への実装からプリンタ、液晶、携帯電話へと需要は拡大し、さらに車載用などへと期待は膨らむ。

写真にTAB露光装置外観と露光部を図1にTABテープ形状と寸法表を示す。

投影露光基本原理と利点

図2に光学系統図を示す。

① TAB露光装置の特徴である投 影露光の基本原理について説明す る。

  • ●超高圧水銀ランプより出た光は楕円集光鏡に捕捉され、第一平面鏡で折り返された後インテグレータに集光される。
  • ●インテグレータで均一になった光、第二平面鏡で折り返された後コンデンサレンズを通ってマスクを照明する。
  • ●コンデンサレンズはインテグレータより出た光を投影レンズに集光する。
  • ●投影レンズはマスクのパターンを像面(テープ面)に投影する。

② 投影露光による利点

  • ●マスクは半永久的に使用可能。
  • ●マスクダメージによるパターン欠損がなく、歩留まりが向上。
  • ●テープの伸縮に対し投影倍率の調整が可能。

装置の特徴

  • ●露光装置用に開発した高輝度、高出力、長寿命超高圧水銀ランプの搭載
  • ●TAB露光装置専用の高効率、高出力、高均一度ランプハウス搭載
  • ●独自の高解像力、低歪投影レンズ光学系の採用と深い焦点深度の達成
  • ●画像処理により高精度アライメントと高重ね合せ精度の実現
  • ●ノーテンション、高スループット搬送
  • ●薄物テープ搬送対応ステージの採用
  • ●クリーンチャンバ採用によりマスク、投影部への塵進入防止
  • ●タッチパネル採用による容易な操作性と故障モード表示などの高メンテナンス性

あらゆるニーズに対応した装置のラインナップ

当初のTAB露光装置は、さまざまな要求に応えるべく、ラインナップが充実している(表)。

①ピンアライメント方式(FESシリーズ)

ベーシック(廉価)バージョン。露光方式は非テレセントリックレンズまたはテレセントリックレンズを使用した投影露光である。投影倍率は2:1と1:1の2種類あり、露光エリアの小さい装置には非テレセントリックレンズを使用し、露光エリアの大きな装置にはテレセントリックレンズを採用した。搬送方式はピンチローラによるノーテンション搬送方式を採用し、高スループット搬送を実現している。位置決め方法はパーフォレーションにピンを挿入して行い、繰返し位置決め精度は±15µm以内である。変形したテープに対しては、露光ステージでテープをクランプする特殊構造により安定的な搬送が可能である。

現在、FESシリーズをベースに新制御化し、高機能化、高スループット化を狙ったUFX-1000シリーズを開発中。高機能化の内容としては、操作性の向上・装置稼動管理機能・高メンテナンス性の実現を目指す。また、高スループット化については、1.5秒/ショットの実現を目指している。

②スキャン式オートアライメント方式(FEAシリーズ)

高位置精度バージョン。露光方式は、投影倍率1:1のテレセントリックレンズによる投影露光である。テープの伸縮に対し0.1%程度の倍率変更が可能。搬送方式はピンチローラによるノーテンション搬送方式を採用し、高スループット搬送を実現した。アライメント方式は、パーフォレーションを光学的に位置検出し、自動的にマスク位置を合わせるスキャン式オートアライメント方式である。マスク交換時間などの段取り時間が短縮でき、 極薄テープや変形したテープの安定的な搬送が可能である。

また、ピンアライメント機構との組み合わせにより、厚く変形したテープの搬送も可能。繰返し位置決め精度は±5µm以下と高精度で、2メタルテープやソルダーレジストなど重ね合せ精度の必要な製品に使用されている。

③画像処理オートアライメント方式(UFXシリーズ)

画像処理方式の高精度・高機能バージョン。露光方式は、投影倍率1:1のテレセントリックレンズによる投影露光である。テープの伸縮に対し0.1%程度の倍率変更が可能である。搬送方式はピンチローラによるノーテンション搬送方式を採用し、高スループット搬送を実現した。アライメントは、マスクのパターンとパーフォレーションまたは実パターンとを画像処理によって相対的に位置決めを行う。また、この装置はパーフォレーションのないテープの搬送が可能である。

テープの薄形化が進むとTABテープ特有のパーフォレーション寸法精度の悪化が考えられる。そこで画像処理を利用し、実パターンでアライメントすることにより高精度の重ね合せが可能となる。CSPや2メタル製品の裏面ビアホール基準でアライメントを行い、表面の露光パターン重ね合せ精度を向上させる。また、BGAのランド基準でアライメントを行いソルダーレジストの露光精度を上げるなどの使用方法がある。繰返し位置決め精度は±5µm以下。極薄テープの搬送が可能で、変形したテープにはテープ押え機構で対応している。表面アライメント顕微鏡など多数のオプションが用意されている。テープの幅広化への対応も可能である。

今後の課題と見通しについて

過去5年程の間で、TAB技術のアプリケーションの多様化と拡大が急激に進んだ。TABの技術革新はこれからも大きく進展していくと思われる。このような急激な変化のなかで装置に対する要望も多様化している。以下に今後課題として当社が考えているポイントを記す。

  • ①高解像力対応投影レンズと装置の開発:今後、COFの生産拡大によりファインピッチ化が急激に進むと考えられる。そのため、近々に必要となる高解像力に対応したレンズの開発が必須である。
  • ②COF用幅広、極薄テープ対応機の開発:COF化によりテープの幅広化、テープの薄膜化が進むと考えられる。それに対応した装置が必要となる。
  • ③2メタルTAB用両面同時露光機の開発:両面同時露光はアライメントの累積誤差も減り大幅な精度向上と生産効率アップとなる。
  • ④クリーン化対策:ファインピッチ化の進展により、今まで以上に塵に対し敏感に対策していく必要がある。今まで問題とならなかったレベルのものまで問題視されてくる。搬送系についても極力無塵化した新しい構造への見直しが必要となる。
  • ⑤超高スループット化
  • ⑥装置のコンパクト化
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