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東京都立技術研究所 講習会テキスト

(2005年10月)

分光放射計による測定技術

ウシオ電機株式会社 システムカンパニー
仲田 重範

1. はじめに

光の波長は紫外線、可視光線、赤外線と幅広く、波長によって各種特性、効果は大きく異なる場合がある。従って光を利用した技術、製品では各波長ごとの特性、効果(分光特性)の測定は欠かすことは出来ない。

ここではそれらの測定が行える分光放射照度計の概要と実際に測定できる各種光源のスペクトル、透過率、反射率、及び色の測定に関する基礎的な知識について紹介する。

2. 分光放射照度計の構造、概要

分光放射計の構造としては単一波長を取り出すモノクロメータ方式と一度に多数の波長の光を取り出すポリクロメータ方式がある。ポリクロメータは、グレーティングを回転させずに各波長のスペクトル分布をフォトダイオードアレイ等の検出器を用いて同時測光できる分光器である。比較的小型、低コストで使い易い為に最近広く使用されている。

以下にポリクロメータ-方式の分光放射照度計について弊社分光放射照度計USR-40を例に簡単な原理を述べる。

まず光はライトガイドファイバの先端にある受光部から分光器のスリットに導かれる。このファイバは光学繊維束で構成され、短波長域まで透過性の優れた石英ガラス製を使用する。分光器ユニット中のグレーティングは、スリットを通した光を分光しラインセンサ上に導く光学部品である。ラインセンサは入射した光の強さに比例した電気信号を出力する素子が1024個並んでおり一度に全ての波長に対する信号が得られる。

図1 ポリクロメータ方式の分光放射照度計の構造

3. 放射量と測光量

光の測定には光の量を物理的なエネルギーとして測定する放射量と、人間の目にどれくらい明るく見えるかを測定する測光量とに大きく分けられる。それぞれ単位も異なり用途により適切な使い分けが必要である。

(1) 放射量

一般に紫外線の測定等で良く使われる「放射照度」は「単位面積に対して、単位時間当たりに流れる放射エネルギー」であり、 [W/m2]の単位で規定され、放射量の代表的なものである。(正式には放射照度であるが単に照度と呼ぶこともある。)

またその強さの光をどれだけの時間照射したかを表すのが積算光量である。

「積算光量」は照度の時間積分値を示し[J/m2]の単位で規定される。

(2) 測光量

測光量とは部屋の明るさや光の明るさのように人間の目にどの程度明るく見えるかを目的として、比視感度と呼ばれる特性を掛け合わせた値で表した量である。通常の部屋の明るさを測定する場合の照度(ルクス)が代表的なものである。その他の測光量も色測定等の可視光を対象とした測定で良く使用される。

表1 測光量と放射量

4. 分光放射照度計の測定可能項目

(1) 分光放射照度測定例(光源スペクトル)

図2 超高圧UVランプ(露光用光源のスペクトル)例

(2) スペクトル経時変化の測定例

図3 超高圧UVランプの光出力立ち上がり特性(スポットキュア SP7)

(3) 色の測定

色度図とは、色を定量評価する時に使用する。色は、赤、青、緑の3種類の原色の比率を変える事で一義的に決まる。この比率が同じ場合は同じ色になる。色度図とは、X軸に主に赤色の成分比率、Y軸に緑色の成分比率をプロットしたもの。青色の成分比率は、1から赤色と緑色との成分比率を差し引く事で、算出される。分光放射計でスペクトル測定すると計算で求めることができる。

図4 CIE 色度図
色度図の特徴は、縦軸yに緑成分を取り、横軸xに赤色成分を取ることである。光の三原色の残りの青はz成分となるが、この平面図には組み入れられていない。しかし、x+y+z=1という了解があるのでx成分とy成分が求まればz成分は自然に求まる。白はx0.33、y0.33の位置にあり、zも0.33となるため三原色がバランスよく配分されたものが白色であることが理解できる。
http://www.dango.ne.jp/anfowld/Lights.html
#光の色について より

5.分光反射率計の構造、原理

次に分光放射照度計にブロードな波長のXe光源を組み合わせた分光反射率URE-30の構造、原理について記述する。曲面を持ったサンプルや大きなワークサンプルでもカットしないでそのまま反射率の測定ができる事等が特長である。

  • 1) 光源(Xeランプ)より出た光はファイバⅠに集光されファイバⅠから出た光はレンズⅠで平行に拡散板を均一照射する。
  • 2) ファイバⅡの入口から(レンズを介して)アパーチャを見るとアパーチャの内側のどの部分を見ても拡散板を見ており、反射面の曲率が異なっても拡散板中央附近の領域を見ているような構造になる。
  • 3) 以下の原理によりサンプルがある程度の曲率を持っていても反射率が測定可能。

・輝度は反射面あるいはレンズの反射率、透過率分だけ変化しその形状(曲率)によらない。(曲率が変わっても輝度は変わらない)

・ ある場所に於ける照度はその場所から見た光源の立体角と輝度で決まる。

多層膜蒸着による曲面ミラーの場合で場所による反射特性に差の差を測定した例

Xeランプ等の光源を使うと反射率と同様に透過率の測定も容易に可能。

透過率測定例(紫外透過ガラスフィルター)

図5 分光反射率計の構造、原理

写真1 曲面ミラーの反射率測定例

図6 集光鏡の反射率測定結果

図7 ガラスフィルター(UV‐D36A)透過率

6. 校正体系(トレーサビリティー)

ポリクロメータで測定された信号は波長とエネルギーに対して校正しないと正しいスペクトルを表示することは出来ない。(簡易タイプでは波長に対する校正のみの場合もある。)次頁に波長校正とエネルギー校正に関するトレーサビリティーの例を示す。

7. 分光測定時の注意点

分光放射照度計や分光反射率計を使用し精度良い測定する為の注意点を以下にまとめる。

  • ① 信号強度が適切かの確認。光が強すぎると信号が飽和して正しいスペクトルが得られない。
  • ② 測定器の角度特性の影響。絶対値が正しく値付けされている分光放射照度計でも大きな角度で受光部に入射する光については測定誤差が生じることに注意が必要。
  • ③ 使用する分光放射計が波長、エネルギーについて校正されているか確認が必要。
  • ④ 透過率、反射率測定する場合の光源は測定したい波長に十な強度を持つ光源を使用し、照度が安定してから測定する。
  • ⑤ 反射率測定の場合には対象物の裏面反射の影響について考慮する。

図8 スペクトロラディオメータ (USR‐30*,40*)ト レーサビリティ体系図

8.分光放射照度計の仕様例

表2 分光放射照度計の仕様

以上

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