USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.29(2007年8月発行)

2007春季 第54回応用物理学会学術講演会

フラッシュランプアニールにより形成された
多結晶Si薄膜への高圧水蒸気熱処理
High pressure water vapor annealing of poly-Si thin film formed by flash lamp annealing

北陸先端化学技術大学院大1,ウシオ電機株式会社2
遠藤 洋平1,藤原 友子1,西崎 昭吾1,大平 圭介1,柄沢 武2,鳥飼 哲哉2,松村 英樹1 Jpn. Adv. Inst. Sci. & Tech.(JAIST)1, R&D center,Ushio Inc.2
Y.Endo1,T.Fujiwara1,S.Nishizaki1,K.Ohdaira1,T.Karasawa1,T.Torikai1,and H.Matsumura1
E-mail:s0630018@jaist.ac.jp

はじめに

瞬間熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)法によりa-Si膜から形成されるpoly-Si膜は優れた結晶性を有しているが、熱処理による欠陥の生成の可能性は否めない。以前、我々のグループから、熱処理時間数十秒のRTAにより形成した膜厚1μm以下の微結晶Si膜に高圧水蒸気熱処理を行うことで、欠陥密度を5x1017cm-3から3μ1016cm-3まで低減できることを報告し、処理温度を上げることで、さらなる欠陥密度低減の可能性があることを示した[1]。また、現在我々が検討している、ミリ秒オーダーの熱処理法であるフラッシュランプアニール(FLA)により形成される、膜厚数μmの太陽電池用poly-Si膜に対しては、さらに高い処理温度が要求される。そこで我々は、500°C以上の処理が可能である新型装置の開発を行い、高圧水蒸気熱処理によるpoly-Si膜の欠陥終端化の検討を行った。

実験

スパッタ法によりCrを60nm製膜したガラス基板上にa-Si膜を4.5μm堆積し、FLAによりpoly-Si膜を形成した。その後、処理圧力を約1MPa、処理時間を1hourと一定にし、処理温度を系統的に変化させて高圧水蒸気熱処理を行った。欠陥終端の度合いは、μ-PCD法による少数キャリア寿命測定を用いて評価を行った。励起用パルスレーザ波長は349nmである。

結果

図1に高圧水蒸気熱処理後のμ-PCD測定結果を示す。poly-Si膜厚は4.5μmであり、高圧水蒸気熱処理温度は523°Cである。立ち上がり直後の急激な減衰は、表面キャリア密度が瞬間的に1019cm-3程度の高密度となるために、オージェ効果が起きてしまっていることによるものと考えられる。その後の緩やかな減衰から、40μs以上という薄膜poly-Siとしては画期的な少数キャリア寿命が得られることが明らかとなった。

図1. Quartz/Cr/poly-Si試料の高圧水蒸気熱処理後のμ-PCD測定結果

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