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光技術情報誌「ライトエッジ」No.33(2010年8月発行)

電子材料 10月号(工業調査会)

(2009年10月)

ステップ&リピート投影露光装置
「UX-5シリーズ」

友永 竹彦

要 約

スマートフォンに搭載される高性能CPU向けとしてCSPの高密度化、フリップチップ化が進んでおり、高性能露光装置が求められている。

当社は有機フリップチップパッケージ向けに、1000台以上のロールステッパ「UFX-2シリーズ」および、50台以上の枚葉ステッパ「UX-5シリーズ」を販売しているが、本稿では、CSP生産における課題と「UX-5」の新機能を紹介する。

1. はじめに

スマートフォンと呼ばれる高機能携帯は、写真、ビデオなどをスムーズに楽しめるよう、CPUにはパソコン並の高機能が求められ、パッケージ形態もフリップチップ化の要求が強くなっている。

フリップチップ実装ではエリアバンプとなり、Bumpパッドへ形成するソルダレジスト開口に高い位置精度が求められる。現在、重ね合せ精度要求は3σで±10μmとなっている。同様に、配線デザインルールについても、現在のL/S=20/20μmから、将来的にL/S=10/10μmを実現することが求められている。

さらにこれらの携帯電話向けFC-CSPは、パソコン向けと比較し品種が非常に多く、多品種生産への対応が求められる。

2. コンタクト露光機での露光

このような中、従来のコンタクト方式では4分割露光を行い、重ね合せ精度を向上させる取り組みがあるが、スループットが下がり、密着回数が増えることによりマスクメンテナンスの回数が増え、マスクコストが増加すると同時に、設備効率も下がる。

密着回数の増加により、マスクがダメージを受ける可能性も高まる。デメリットが大きい。

またマスクメンテナンスは人手で行わなければならず、自動化・無人化は不可能である。

3. ダイレクトイメージの課題

ダイレクトイメージ(DI)装置については、マスク露光とは異なり、アライメント時にマスクマークとワークマークを重ね合せて観察できない。よって、マスク露光装置よりもシビアな温度管理と機械精度が求められる。また、マスク露光装置が静止状態で露光するのに対し、DI装置ではスキャンしながら露光するため、非常に高精度な駆動系とその制御が必要になる。

ライン幅50μm程度の領域では上記の精度は問題にならないが、ライン幅10μm、重ね合せ精度±10μmの領域においては、その精度を安定的に達成する技術は確立されておらず、DIメーカーから、課題として取り上げられている。また、描画分解能を上げたい場合、DIでは装置の大幅改造または買い替えが必要になる。

以上の背景より、現在、マスクメンテナンス不要で生産利用率を極限まで向上させることが可能(図1)で、総合重ね合せ精度・ファインパターン露光性能に優れ、グレードの高いマスクに切り替えるだけで、分解能を上げることができるステッパへ注目が集まっている。

本稿ではパッケージ基板用ステッパ「UX-5シリーズ」の特徴、新機能および「、UX-5」だからこそ可能となる無人化された露光ラインのコンセプトを紹介する。

図1. 生産利用率

4. UX-5の特徴と要素技術

当社のパッケージ基板用ステッパ「UX-5シリーズ」は、L/S=8/8μm の解像性能(図2)、±6μm(図3)の総合重ね合せ性能および、135面/時間の高いスループットを有しており、最先端 FC-BGA の量産用として採用が加速している。

また、2013年以降のロードマップを見据え、L/S=4/4μmの超高解像装置もラインナップしており、最先端の顧客で採用されている(図4)。

「UX-5」の高い性能を実現する要素技術は次の通り。

  • ・ 業界に先駆けて2007年に開発したΦ355mm(250x250mm)レンズ
  • ・ 光学系に最適化された高出力UVランプ
  • ・ 高速ステップ&リピートを実現するエア浮上構造のサーフェスステージ
  • ・ X/Y独立の変倍率を適用し基板歪を吸収する、オートスケール機能
  • ・ Φ355mm全面でL/S=8/8μmを安定解像可能な投影レンズ

図2. 「UX-5」の解像性能

図3. 重ね合わせ精度

図4. 超解像装置の解像性能

5. 新機能

CSPは、パッケージサイズが小さいため、1Lotあたりの基板枚数は少なくなる。よって、多品種生産へのニーズが強い。具体的には品種切替の段取り替え時間を極小にすることが求められ、CSP向けステッパには以下の機能を搭載している。

  • ・ 30秒マスク交換可能なマスクチェンジャー
  • ・ 20段までのマスクストッカ(写真1)
  • ・ マスクメンテナンスフリーを実現する9インチマスク採用(マスクペリクル対応)
    マスクペリクルを使用することにより、マスクの”検査”までも不要にし、マスクメンテナンスフリーを実現(図5)
  • ・ 1台で表裏両面を露光する両面露光方式

また、CSP特有の薄型基板向けの機能として、以下の機能を実現した。

  • ・ ワークからの発塵・薄型ワーク折れを防止する光学式プリアライナー(幅寄せ機構)
  • ・ 薄型ワークに対応する、ワーク押さえ/リップシール吸着板

写真1. 20段マスクチェンジャー

図5. マスクペリクル対応

6. 無人化技術

今後の量産装置では、より少ない人員で運用でき、よりクリーンな装置が求められている。

密着方式のマスク露光では無人化は不可能だったが、ステッパ技術及び、マスクペリクルを使用することでのマスク検査レス・メンテナンスレスを可能にし、露光ラインを無人化=クリーン化することを実現した。

当社では半導体量産用装置製造の経験を生かし、オンライン及びスタンドアロンでの無人Lot切替運用にも対応している。

今後も生産現場の無人化、高歩留り化によるパッケージ基板露光のトータルコストダウンを積極的に展開していく。

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