USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.35(2011年8月発行)

秋季第71回応用物理学会学術講演会(応用物理学会)

(2010年9月)

電子線励起法による高Al組成AlGaN/AlN
量子井戸からの100mW 深紫外発光

100mW Deep Ultraviolet Emission from Al-rich AlGaN/AlN
Multiple Quantum Wells Pumped by an Electron Beam
大音隆男1),ライアンバナル1),片岡研2),船戸充1),川上養一1)
Takao Oto1), Ryan G. Banal 1), Ken Kataoka2), Mitsuru Funato1), and Yoichi Kawakami1)
1) 京大院工 2) ウシオ電機株式会社
1 ) Dept. of Electronic Sci. and Eng., Kyoto Univ. , 2) SSLS Develop Dept., Ushio Inc.

はじめに

AlGaNの内部量子効率は高い値が報告されているにもかかわらず、AlGaNベースのLEDの外部量子効率は、少しずつ改善されているが非常に低い(3%以下)のが現状である[1,2]。その物理的要因として、p型AlGaNのホール密度が低いことなどが指摘されている。そこで、原理的に解決が難しいこの問題を回避するために電子線励起法が提案され、実際にSi-doped AlGaN薄膜の電子線励起により、247nmで2.2mWの出力が報告されている[3]。今回、Modified MEE法で作製された高品質な高Al組成AlGaN/AlN多重量子井戸(multiple quantumwell: MQW) [4]の電子線励起を行った結果、100mWの深紫外出力と最大40%のパワー効率を実現したので、光学特性の評価とともに報告する。

実験方法

測定に用いた試料は、(0001)sapphire基板上にModified MEE法で600nmのAlNを成長させ、その上に8周期のAl0.69Ga0.31N/AlN量子井戸を作製した構造である。井戸幅、障壁幅はそれぞれ1nm、15nmである。電子線を直径~0.5mmまでフォーカスして試料に入射した。試料裏面から3mm離れたところに1x1cm2 AlGaNフォトダイオード(PD)(ALGAN K.K.) [5]を設置して、光検出を行った。AlGaN PDは280nmより長波長側に感度がないことから、バンド端発光のみを検出可能である。

結果と考察

まず、室温で試料のCLを行った結果、発光中心波長は~240nmであった。MQW構造を電子線励起する際には、加速電圧を最適化する必要があると考えられる。これは、加速電圧が小さいと井戸層で生成される電子正孔対が少なく、加速電圧が大きいと電子線のしみ込み深さが大きくなりすぎて井戸層だけを効率よく励起できないためである。そこで、最適な加速電圧を調べるために、モンテカルロシミュレーションを行った。その結果、前述したMQW構造に対しては、8kVのときが一番効率よく井戸層を励起できることが判明した。

次に、加速電圧VAを6、8、10kVとしたときの深紫外出力を測定した。図に出力電圧の照射電流依存性を示す。照射電流の増加とともに、深紫外出力も増加し、VA=8、10kV、照射電流45µAのときに100mWの深紫外出力を達成した。また、パワー効率に関しては、VA=8kVのとき最大となり、とくに照射電流5µAのときに40%を越す値が得られた。これらの実験結果はモンテカルロシミュレーションの結果とほぼ一致し、妥当であるといえる。詳細は、当日に報告する。

Figure : Output power and power efficiency as a function of irradiated current with the different acceleration voltage ( VA=6, 8, and 10 kV ).

謝 辞

ALGAN株式会社の人羅俊実様にAlGaN PDに関するサポートをしていただきました。

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