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光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集ウシオの新しい取組み第一回〉

LCD 向け TAB・COF用露光技術

(2012年3月)

LCD製造の技術動向と、TAB/COF用露光装置最新技術

友永 竹彦

1. はじめに

LCDドライバーICの技術動向として、ここ数年、テレビ1台あたりのCOFテープ個数を削減し、コストダウンを図るための多ピン化=COFテープのFineピッチ化が進行してきている。現在は720pinが主流であるが、960pinから1000pin以上にシフトする可能性があると予測されている。

ウシオ電機は、多ピン化からくる高精度化によるニーズに応えるため、TAB/COF露光装置の技術開発を進めてきた。ここでは、TAB/COFテープ基板の高精度化に対応する高解像投影レンズモジュールおよび、高精度実装への要求に対応する、インナーリードピッチ精度改善技術について紹介する。

※多ピン化とは:
ひとつのドライバーICがカバーするチャンネル数を増やすことにより、ドライバーICの個数を削減するコストダウン技術。多ピン化=COFテープ微細化につながる。

2. TAB/COF用露光装置多ピン化対応技術の紹介

(1)高解像化

多ピン化に伴い、ひとつのICチップにより多くのチャンネル=端子を設ける必要から、COFテープに対しても、接続端子のファインピッチ化が求められるようになった。

従来、ボリュームゾーンであった30µmピッチ程度の解像力要求から、25µmピッチ以下~20µmピッチへの解像力要求が出てきた。ウシオ電機では、この高精度化に対応するために、2008年に「UFX-2477BX」の販売を開始した。

このUFX-2477BXは従来機のUFX-2458BXに比べ、解像性能を1.5倍に高めたモデルで、TAB/COFテープに使われるフォトレジストにおいても、4µmのスペース線幅バラツキP-P0.4µm以下にて安定的に解像することが可能になり、COFメーカー様のファインピッチ化に貢献している。

図1. UFX-2000B

(2)インナーリードピッチ誤差改善

多ピン化によるファインピッチ化の進展により、COFテープにドライバーICを実装する際の端子のピッチが狭まった。そのことにより、もしCOFテープのインナーリード部分全体の幅と、IC端子全体の幅が大きく異なると、実装不良が生じてしまう。

実装不良を起こさないために、COFテープに対しては、テープ上のリード線のピッチ誤差を、より厳しく管理する必要が出てきた。具体的にはインナーリード幅全体のピッチズレ誤差を1µm以内にする必要が出てきた。

ウシオ電機では、この要求に対し、2009年に累積ピッチ改善オプションを開発した。具体的には、レンズ歪の高精度化、装置内温度管理およびテープ搬送の最適化である。以下にこれらの技術を紹介する。

①レンズ歪高精度化技術

TAB/COF露光装置で用いられている露光技術は、Φ200mmの大口径レンズを用いて、マスク像をワーク面に投影する、大面積一括投影露光技術である。

従来のレンズ技術では、レンズ面内の投影像の位置ズレ=歪が、1.5µm程度発生していた。この歪を、独自で開発したレンズ加工精度測定装置を用いて、フィードバック加工をすることにより、0.5µm以下に高精度化することに成功した。このことによりインナーリードの投影像の高精度化に成功した。

②装置内温度管理

レンズ歪高精度化技術により、投影像のインナーリードピッチの高精度化を達成できたが、実際にはインナーリードピッチの規格は実装時の規格であるため、露光対象物であるテープ自体が露光時に伸縮してしまっている場合、インナーリードピッチがばらついてしまう。

露光装置としては露光中のテープ寸法のバラツキを極小に抑える必要が出てきている。

露光時のテープの伸縮バラツキは主に、搬送動作および露光中の温度変化によって生じるため、新たに装置内温度管理技術を開発した。

③ノーテンション搬送技術

ウシオ電機は、従来より、TAB/COF露光装置にはピンチローラーによるノーテンション搬送技術を採用してきた。この方式により、高速搬送を実現しながら、搬送中にテープにかかるテンションを抑制し、テープ変形を極小に抑えることができるため、COFテープの高精度化を実現することが可能になっている。

3. まとめ

上記の3つの技術(レンズ歪高精度化技術、装置内温度管理技術、ノーテンション搬送技術)を組み合わせることにより、COFテープの更なるファインピッチ化を可能にすることができる。

またTAB/COF露光装置向けに開発した上記技術は、ウシオ電機の他の露光装置、すなわちインターポーザー基板向けステッパ、LED向け一括投影露光装置UX4-LEDs等に役立てられ、さまざまな業界において、露光装置を通じ、新しい価値を提供している。

図2. UX4-LEDs FFPL

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