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光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集ウシオの新しい取組み第一回〉

カラーフィルターの露光技術

(2012年3月)

カラーフィルターの露光技術

相浦 良徳

1. カラーフィルターとは

テレビ、ノートPC、携帯電話、スマートフォンなど、さまざまなカラー液晶ディスプレイがあるが、基本構造はほぼ同じで、TFTなどがのったガラス基板+液晶+カラーフィルター(CF)基板+バックライトからなる。

その動作原理は、片方に偏光板が貼り付けられた2枚のガラス基板の間に液晶が注入されており、TFTがその液晶の向きを制御して、シャッターの役割を果たしている。この細かいシャッターが無数に集まってディスプレイを形成するわけだが、シャッター部の一つ一つはセル(画素)と呼ばれ、赤・緑・青(RGB)などからなるフィルター(カラーフィルター)が設置されており、本体背面に設置された蛍光灯やLEDなどのバックライトから出る光がフィルターを通して、RGBの光となり発せられ、人間の目ではそれらの光が合成されて、様々な色になって見えている。

上記カラーフィルター部の基本構造は、セルを区切るブラックマトリクス(BM)とセル内部のRGB部、2枚のガラス基板間に液晶を注入する均一なスペースを作るためのフォトスペーサー(PS)、カラムスペーサー(CS)と呼ばれる柱形状(カラム)を形成したスペーサーからなる(図1)。

これらの部位は、ほとんどがフォトリソグラフィー工程にて作られる。BMやRGBは、色を決める顔料を混ぜたレジストに超高圧UVランプから発する光を当て、当たった部分のレジストを化学反応させてそのまま残し、露光していない部分のみを化学的に除去することで形成されている。

図1. カラーフィルターの基本構造

2. カラーフィルターの動向と露光用ランプ

ここ10年来のトレンドとしては、液晶パネル、液晶パネル基板の大型化とともに、カラーフィルター向け露光ランプのサイズも大型化してきた。大型基板を露光するには、露光エリアを大きくする必要があり、そのため、ランプに求められる光量も、エリアサイズに応じて多くなった。

光量を増やす手段としては、

①高発光効率化

②高利用(取込)効率化

③高電力化

と、主に3つの方向性がある。このうち、①は、物理法則に基づく面が高く、画期的な改良は難しい。②は、主として短極間化することで達成されるが、より短寿命になりやすいデメリットもある。③は、ランプ自体を大型化する方法と多灯式にするという方法で達成してきた。

TVの多面取りによる大型化の流れはかなり緩やかになってきたが、デジタルサイネージなど、パネル全体をひとつの大きな液晶として使用する用途はまだ延びている。この場合、パネル全体がひとつの製品となるため、より高い均一性、安定性がランプにもめられると考えている。

また、最近のトレンドとして、高精細化対応などがあり、

④短波長強化型

⑤分光分布変化が少ない

などのニーズがある。

特に、スマートフォンに使われるような300dpiを超える高精細液晶や有機ELなどにおいて、一部では、④⑤での従来以上の要求や新プロセスに絡む要求が聞こえてきており、要求に対応すべく露光方法の変更、レジスト変更などとともに、求められる光の質が変わることが予想される。

当然ながら、

⑥長寿命化

というコストダウンにつながる要求も大きくなっている(表1)。

3. カラーフィルター露光向けランプの技術動向

弊社では、大型化対応としての大電力化では、最大35kWまでのカラーフィルター露光向けランプの設計、製造能力を持ち、お客様のニーズに合わせた提案が可能である(図2)。

特に大型化のキー技術となるのが、陽極の温度低減技術である。

弊社においては、独自の電極温度低減策として、スーパーアノード(図3)を開発した。この陽極は、タングステン内部に融点の低い金属を内封した構造となっており、点灯中に融解した内封金属の対流効果によって、放電アークに接している陽極先端の熱を、効果的に電極後方へ輸送することができる。設計にもよるが、タングステンの熱伝導率に対して2~3倍程度の実効熱伝導率になっている。従来型の電極よりも先端部を低温にすることができ、結果、タングステンの蒸発を減少させることでバルブ黒化が低減し、放射照度維持率が向上する。

使用用途としては、表1に示すように、多岐にわたって可能性を秘めている技術である。

図2.大型カラーフィルター露光用ランプ

図3.スーパーアノード

表1

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