光技術情報誌「ライトエッジ」No.39(2013年6月発行)
2013タッチパネル大全(電子ジャーナル)
(2012年7月)
カバーパネル・タッチパネル・液晶パネルの固定
ウシオのUV硬化装置
鈴木 充
1. スマートフォン・タブレット端末の市場の伸び
周知の通り、iPhoneやiPadに代表されるスマートフォンおよびタブレット端末の発売が相次いでいる。携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの割合は、すでに半数を超えている状態だ。図1からもわかる通り、スマートフォン市場の成長率は高く、2016年には、従来型携帯電話の市場を抜く予想である。また、タブレット端末も今後は着実な伸びが予想される。
2. スマートフォンに使われるUVキュア技術
この注目されているスマートフォンには、UVキュア技術が使用されている。それは、スマートフォンの特徴ともいえる表示部分である。実際操作する際に触るカバーパネルとタッチパネル、タッチパネルと液晶パネル
の間に、UV硬化型樹脂を充填しUV硬化させている。パネル間にUV硬化型の樹脂を充填する理由はいくつかあるが、主な理由は、視認性・耐衝撃性の向上が挙げられる。
パネル間に充填する樹脂の形態は大きくわけて2種類ある。シート状に加工された物と液状の物である。カバーパネルには、黒などの印刷が施されているために段差があるが、この段差を吸収しやすいのが液状方式である。最近採用率が伸びており、使用されている液体はUV硬化型が多いため、ウシオのUVキュア技術が役に立っている。この方式はスマートフォンだけではなく、タブレット端末、PC、TVなどにも展開されつつあり、ますます用途が広がっている。弊社では、各製品に出てくる様々な課題を解決し、お客様に喜ばれるUVキュア装置を提案していきたいと考えている。
3. 「スポットキュア」と「ユニキュア」
弊社のUVキュア製品を紹介する。
「スポットキュア」は、点光源である超高圧UVランプを使用しており、ファイバー等によって光を取り出す製品である(図2参照)。ワークの条件に応じて、ファイバーの分岐数・照射径・長さなどを調整する。
「ユニキュア」は、線光源を使用したUV硬化システムである。ランプを内蔵した灯具(図3)・冷却用ブロア・電源で構成されており、これらをセットで販売している。「スポットキュア」と比較して、大きい面積に照射することができる。ランプはメタルハライドランプと高圧UVランプの二種類があるが、上述したスマートフォン用では、主にメタルハライドランプが使用されている。
また、「スポットキュア「」ユニキュア」共にランプの製品であるが、LEDの製品(図4)も扱っている。そのため、要望に応じて、LED光源の製品を提供することも可能である。
4. プロセスにおけるウシオのUVキュア装置
それでは、この「スポットキュア」と「ユニキュア」がどのように使用されるのか、簡単に説明したい。
まず、2枚のパネルを貼り合わせた直後に仮固定が行われる(以下このプロセスを“仮硬化”と呼ぶ)。パネルがずれない様にするためである。固定方法はいくつかあるが、点で数箇所固定する場合には「スポットキュア」、全面で固定する場合には「ユニキュア」が使用されている。仮硬化においては、完全に固めるわけではないので、剥がしてやり直すことも可能である。
貼り合わせに問題がなければ、次に、完全に固定するプロセスへと進む(以下このプロセスを“本硬化”と呼ぶ)。ここでは、主に「ユニキュア」が使用されており、ワークをコンベアに載せて搬送し、照射する場合(図6参照)と、ステージに載せて一括照射する場合がある。この本硬化プロセスは最後の仕上げであるため、非常に大切なプロセスとなる。特に、高温によってカバーガラスが変形したり、液晶パネルに不具合が起きたりなどの問題が出ないようにするため、ウシオの低温処理技術を駆使した製品を提供している。
仮硬化と本硬化のプロセス以外に、“側面硬化”を取り入れるユーザもある(図7参照)。貼り合わせた後、上方からのUV照射のみでは印刷の下が固まりにくいという問題があるためだ。
代表的な方法としては、「スポットキュア」または「LED」で横から照射する方法がある「。スポットキュア」にライン状のファイバーをつけて、細い隙間に当て込むのである(図8参照)。標準仕様製品もあるが、製品ごとに樹脂の膜厚や印刷の幅などが異なるため、お客様の要望に応じて、ファイバーの設計を行うことが可能である。
5. プロセス全体の提案とアフターサポート体制
以上の説明からわかるように、弊社は仮硬化・本硬化・側面硬化のすべてに提案できる光源を持っている。他にも、プロセス管理に必要な照度計や、パネルの透過率なども測定できる分光放射照度計も扱っており、これらのことから、プロセス全体を提案できることが、弊社の強みである。
また、弊社は、現地法人(子会社)に日本人エンジニアやローカルエンジニアを配置し、きめ細かなアフターサポート体制を整えている。そのため、海外で量産する際も、安心して弊社製品を使用することができる(図9.参照)。
今後、スマートフォンやタブレット端末などの市場が伸びていくにつれ、従来と異なる材質のパネルや様々な形状が出てくることが予想される。弊社では、光技術を通じて、それぞれのプロセスに貢献していきたいと考えている。
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今号では、各種の光源(半導体露光用EUV、複写機用LED、高輝度・長寿命・高安定のLDLS、光加熱用ハロゲンヒータなど)や、光の装置・システム(インターポーザ基板用露光装置、スマートフォン・タブレット端末用UVキュア、新規蛍光免疫素子Q-bodyによる薬物検出システムなど)など、2012年春から2013年春にかけて発表した技術や市場動向の論文15件を掲載しました。
シリーズ「大学研究室を訪ねて」では、新しい機能性タンパク質と有機メソッドの創製に挑む、東京工業大学資源化学研究所の上田先生をお訪ねし、開発に成功され、今、話題を集めているQ-bodyを用いた免疫測定法をご紹介しております。
(2013年06月)