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光技術情報誌「ライトエッジ」No.41(2014年12月発行)

第22回日本エネルギー学会大会(日本エネルギー学会 2013.8)

常温無触媒脱硝法の開発

Oxidation treatment of elemental mercury gas by 172 nm vacuum ultraviolet
(岐阜大)○野村俊介,武山彰宏,早川幸男,神原信志,(ウシオ電機)菱沼宣是
○Syunsuke NOMURA, Akihiro TAKEYAMA, Yukio HAYAKAWA, Shinji KAMBARA(Gifu University)Nobuyuki HISHINUMA (USHIO lnc.)

SUMMARY

To remove nitric oxide (NO) in flue gases at low temperature, the selective non catalytic reduction (SNCR) by photochemical reaction was examined at room temperature. Ultraviolet irradiation of 172 nm, 185 nm, and 190 nm was employed as photochemical reaction source. Using NO/O2/N2/NH3 gas mixture, the effects of NH3/NO molar ratios (MR), valid number of photons, and oxygen concentrations on NO removal were investigated. An approximate 99% NO removal was attained at room temperature with an MR = 1.0, F = 1.0 L/min. and 8.3% O2.

1. 緒 言

種々の燃焼プロセスから排出される窒素酸化物(NOx)は、世界的にその排出規制(濃度と対象設備)が強化・拡大されている。新しいNOx排出規制として、船舶ディーゼルエンジン排ガスへの適用が予定されており、何らかの排ガス処理対策を行わねばならない。

この排ガスは180°C以下の低温であること、触媒を被毒する硫黄酸化物を高濃度で含むことから、従来技術であるSCRの適用は困難であり、無触媒・低温で脱硝する新規な反応法の開発が求められている。

我々は、NO/NH3/O2ガスに波長172nmの真空紫外線(VUV)を照射すると、光反応による脱硝が起きることを見い出した1,2)。本研究では、NH3の分解に及ぼす紫外線波長の影響を調べて光脱硝に最適な波長を決定したうえで、脱硝率に及ぼすフォトン数の影響を明らかにする。さらに、実験装置のスケールアップを行い、ラボスケールの脱硝挙動と比較する。

2. 実験装置・方法

Fig.1に実験装置の概要を示す。装置は、模擬ガス供給部、光反応器、副生成物捕集部、連続式ガス分析装置から成っている。模擬ガス(NO/N2/O2)とNH3をそれぞれマスフローコントローラーで流量制御し、混合した後、円筒型の光反応器に導入した(光反応器の詳細は、次論文7-2-4参照)。反応前後のガス組成は、赤外線式NOx計、赤外線式N2O計、ジルコニア式O2計により連続分析した。

脱硝実験では、NO濃度600ppm、O2濃度8.3%固定とし、ガス流量を1.0-3.0 L/min、NH3濃度600-1200 ppmに変化させ、フォトン数と脱硝率の関係を調べた。またNH3分解実験では、紫外線の波長を変化させ(172,185,190nm)、フォトン数とNH3分解率の関係を調べた。

なお、光反応器内の温度は、紫外線ランプの放射熱によって約150°Cとなっている。

Fig. 1 Schematic diagrams of experimental apparatus.

3. 実験結果および考察

3.1 波長別のNH3の光分解

光反応器内に滞在するNH3分子に作用するフォトンの数N [−]は、次式で求められる。

ここでAはランプ表面積[cm2]、Pはランプ出力[W/cm2]、θはガス滞留時間[s]、αはNH3の吸収係数[atm-1cm-1]、PNH3はNH3の分圧[atm]、dは流路幅[cm]、hはプランク定数[Js]、νは振動数[1/s]、cは光の速さ[m/s]、λは紫外線波長[m]。

(1)(2)式より、波長λを変化させると(αも変化し)Nが変化することがわかる。NH3にフォトンが作用することにより、(3)式のようにNH3が分解してNHを生じ3)、例えば(3)式のように脱硝に寄与する。

これより、NH3分解率が高い波長のランプが脱硝に適していると評価できる。そこで紫外線波長別(ランプ毎)にフォトン数を変化させ、NH3分解率を比較した(Fig.2)。

フォトン数が1.5x1020以下では172 nmよりも190、 185 nmの方がNH3分解率が高い。これはNH3の吸収係数αが190 nm > 185 nm > 172 nmであることに起因している。一方、ランプ出力P は、172 nm > 190 nm > 185 nmであるため、172nmのランプが最も多いフォトン数を発生でき、結果NH3分解率も最も高くなった(48.3%)。これより、光脱硝には172 nmのエキシマランプが適していると結論できる。

Fig. 2 NH3 decomposition by three different wavelength.

3.2 脱硝特性

Fig.3にフォトン数と脱硝率の関係を示す。ガス総流量(1.0-3.0 L/min)とNH3/NOモル比MR = 1.0-2.0を変化させると、光反応器内ガス滞留時間θとNH3分圧PNH3が変化するため、NH3分子に作用するフォトン数が変化する。

Fig.3からフォトン数の増加によって脱硝率が増加することがわかった。これはすなわち、NH生成量を増加させるためと理解できる。したがって、同じフォトン数では一定の脱硝率を示すはずであるが、Fig.3ではMRの増加によって脱硝率が増加した。これは、過剰のNH3の存在により脱硝反応が促進されることを示している。

Fig. 3 Effect of photon number on deNOx characteristics.

3.3 スケールアップ

Fig.1の光反応器(ラボスケール)を容積基準で4.2倍にスケールアップし、脱硝特性を比較した。両者の比較因子をNH3に作用するフォトン数1個あたりのNH3分子数[個](NH3/Photon)とし、脱硝率との関係をFig.4に示した。ガス流量範囲は、パイロットスケールにおいて1.0-25 L/minである。

Fig.4よりNH3/Photonが大きくなると脱硝率が低下することが両スケールの反応器において観測されたが、その特性は異なることもわかった。これは、脱硝反応が単にNH3/Photonだけではなく、他の因子(例えば、光の透過距離やガス流れの状態)にも影響を受けることを示している。

Fig. 4 Effect of NH3/Photon ratio on NO removal between the lab-scale reactor and the pilot-scale reactor.

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