第42回日本光医学・光生物学会(2021年1月22日)


紫外線照射によるラット角膜内CPDの経時的変化 

 

筆者氏名:○杉原 一暢(すぎはら かずのぶ)1,海津 幸子(かいづ さちこ)1,佐々木 正裕(ささき まさひろ)2
西明 愛子(にしあき あいこ)2,大橋 広行(おおはし ひろゆき)2,五十嵐 龍志(いがらし たつし)2,谷戸 正樹(たにと まさき)
 

※筆頭演者○印

所属機関名:1 島根大医学部眼科 2 ウシオ電機 

 

抄録本文

 

【背景と目的】

 Cyclobutane pyrimidine dimers (CPD)は紫外線照射により DNA のピリミジン塩基が連続した箇所で変化して生じるDNA損傷の一つである。我々は、第39回および第40回日本光医学・光生物学会において、波長222nmと254nm UVCをラットの眼に照射すると24時間後の観察では、254nm UVCは角膜障害を引き起こすが、222 nm UVCは角膜障害を起こさず、角膜内にCPDも観察されない事を報告した。
 今回は、222 nmと254 nm UVCを照射した角膜内のCPDが照射直後から12時間後までどのように変化するか観察し、角膜傷害が発生する機序について検討した。 


【方法】

 アルビノラット(Sprague-Dawley系、雄、6週齢)の角膜に麻酔下で222 nmおよび254nmのUVCをエネルギー量がそれぞれ600 mJ/cm2、50 mJ/cm2となるように照射した。
 照射直後、0.5、1、2、4、6、9、12時間後に眼球を摘出してパラフィン切片を作成し、免疫染色を行ってCPDの局在を観察した。
 

【結果】

 254 nm UVC照射直後の角膜では、角膜上皮の細胞全てにCPDが観察された。その後、陽性反応は角膜実質に近い側から徐々に消失し、表層側の細胞のみに反応が観察されるようになったが、照射12時間後でも最表層の細胞には陽性反応が観察された。
 一方、222 nm UVC照射直後の角膜にもCPD陽性細胞は観察されたが、角膜上皮の最表層の細胞のみであった。CPD陽性細胞は時間の経過とともに徐々に減少し、9時間後には最表層にわずかに観察されるのみとなり、12時間後には観察されなくなった。 


【結論】

 254nm UVCは角膜上皮の深層まで到達して細胞に障害を与えるのに対し、222 nm UVCは角膜上皮細胞には到達するが最表層のみであり、通常のターンオーバーによって短時間で速やかに上皮より剥離するため角膜に障害を起こさない事が示唆された。 



 
Copyright © USHIO INC. All Rights Reserved