表面技術協会 第143回講演大会(2021年3月4日)


真空紫外光による酸化膜の還元


(ウシオ電機 )○ 島本 章弘 Akihiro SHIMAMOTO 
福田 忠司 Tadashi FUKUDA

キーワード真空紫外光,酸化膜,還元]


 

1.緒言

 銅は集積回路やプリント基板における配線材料として広く用いられている。しかし,表面に酸化被膜を形成し,これが電気抵抗変化やメッキ接合不良の原因となる。還元することで銅酸化被膜を除去する方法として,ギ酸などの薬液を用いる方法,プラズマや熱分解により発生させた水素原子を用いる方法が報告されている1,2)

 ここでは,アルコールの真空紫外(VUV)光分解3)によって生成する水素原子を用いた銅酸化膜の新規還元方法について述べる。
 

2.実験方法

 10 mm角の銅板(C1020P)を2 mol/L塩酸中で1分間洗浄したのち,窒素ブローにより乾燥した。大気(19.1℃,64 %RH)中で,Xe2*エキシマランプ(172 nm,ランプ表面での放射照度45 mW/cm2)直下に2 mmの距離をあけて銅板を設置し,15分間ランプを点灯することで銅板表面を酸化した。次に,純エタノールに窒素をバブリング(1 L/min)した雰囲気ガスでパージした処理室内において,Xe2*エキシマランプ直下に2 mmの距離をあけて酸化被膜をもった銅板を設置し,15分間ランプを点灯した。この操作をVUV+EtOH処理と称する。VUV+EtOH処理前後のサンプル表面化学状態をX線光電子分光(ULVAC-PHI, PHI Quantera SXM)により分析した。


3.結果および考察

 図1VUV+EtOH処理前後におけるXPSCu2pスペクトルを示す。VUV+EtOH処理前はブロードなメインピークおよびサテライトピーク(*)が確認され,これらは酸化銅(II)に由来する。VUV+EtOH処理後にサテライトピークが消失し、シャープなメインピークのみが確認されたことは,酸化銅(II)がすべて還元されており,銅または酸化銅(I)となったことを示す。また,2-プロパノールを用いた場合にも同様の結果が得られた。

 XPSCu2pスペクトルでは銅(Cu)に対して酸化銅(I)Cu2O)の化学シフトがわずかであり,区別することができない。オージェ電子ピークによるこれらの区別により,VUV+EtOH処理によって酸化銅(II)がどちらの酸化状態まで還元されたかを確認する予定である。
 

 

                
                    

4.結言

 エタノール蒸気中でのVUV光照射により,銅板表面に生成した酸化銅(II)を還元できることがXPSにより確認された。


 

文献

1)中島 毅ほか;第23回エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集,11C-04(2009).
2)小澤 直人ほか;第29回エレクトロニクス実装学会春季講演大会講演論文集,18C1-2(2015).
3)島本 章弘ほか;第142回講演大会講演要旨集,105,表面技術協会(2020).



  

  


 

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