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光技術情報誌「ライトエッジ」No.2/特集 液晶バックライト光源(1995年春発行)

照明学会研究会資料 LS-95-1~6, P.1~10

(1995年2月)

情報機器用光源総論

鈴木義一(ウシオ電機株式会社)

1.はじめに

世は上げてマルチメディアの時代である。マルチメディアの定義については各論があるが、各種の情報を各種のメディアで扱うに、デジタル系つまりコンピュータを介して処理や伝達するものであることは間違いなさそうである。これらを支える各種装置には、情報を読み、情報を処理し、記憶、伝達し、ディスプレイまたはプリントアウトする機能つまり入出力機能が求められる。従来からの事務機器であるファクシミリ、コピー機、光ファイル等も必ずしもデジタルではないが同様の機能を持っている。これらの機能を達成するために光が使われ、各種の光源が使われており、各種の光源の能力を最適に引き出すための点灯電源が共に使われている。これらの光を使った情報機器の市場規模として、光産業振興協会の集計を以下参考に示す。それによると、光産業は平成不況の中に在って電子産業全体が前年比マイナス成長に留まっているのに対し、過去数年の経緯をみても順調な成長を示している。

  • 1990年 3兆1,690億円
  • 1991年 3兆4,680億円
  • 1992年 3兆6,820億円
  • 1993年 3兆7,850億円

(財)光産業振興協会集計
〔光産業の国内生産額〕

この内、光ディスク機器は約1兆4千億円、光入出力機器は約8千億円、光伝送機器は約2千4百億円を占める。この集計に含まれていないパソコン等のバックライトを使う情報機器の金額を加えれば更に巨大な規模となる。ここではこれらの機器のうちランプが使われている情報機器とランプの概要をのべる。

2.光源を使う惰報機器の種類

光源を使う情報機器の分野としてはOA機器,画像表示装置,光記録機器,光伝送機器,画像入力機器等がある。これらの分野ごとの機器としては表1のようになる。

表1 光源を使う情報機器の分野と機器の種類

3.情報機器に使われるランプ

ランプは入出力部分に使われ、これを機能ごとに大別すると、読み取り,書き込み(定着),バックライトの機能に分かれる。ここではこれらの機能ごとに、どのような機器にどのような光源が使われているかについて概要をのべるにとどめ、個々の光源、機器の詳細についてはそれぞれの機器や光源の章にゆずる。

3.1. 読み取り用光源

表1のOA機器のうち、パソコン,ワープロ,光プリンター以外の機器には読み取りの為の照明光源にランプが受光器との組合せで使用される。受光器としては、アナログ式PPCでは感光体(Se,Cds,a-Si,0pc)等が使われ、フイルムスキャナー,イメージリーダ,ファクシミリ,デジタルPPC等では集合型イメージセンサーや密着型イメージセンサーが使われる。ランプとしては、ハロゲンランプや熱陰極蛍光ランプ,セミホット蛍光ランプ,熱陰極希ガス蛍光ランプ,外部電極希ガス蛍光ランプが使われている。

3.1.1 読み取り用ランプに要求される特性

読み取り用ランプの機能と読み取り機器の機能との関係の概要を表2に示す。

表2 読み取り機能と光源の機能1)

(1)寸法

情報機器の小型化や実装空間の減少のためにランプ長の短縮や小管径化が要求される。

(2)高出力

受光器の高感度化は進行しているが、読み取り速度の向上や高分解能の要求を満たすために、より一層の高出力化や高輝度化が要求される。このため、例えば蛍光ランプの場合には一般照明用に比べて数倍もの高負荷で使用され、電極構造や蛍光体,封入ガス等に工夫がされ高出力が達成されている。イメージリーダやファクシミリでは基本的にはラインセンサーの読み取り幅を照射すれば良く、蛍光ランプから放射される光束利用率を高めるために配光を制御したアパーチャータイプやリフレクタタイプが使われている。

(4)フリッカ

ハロゲンランプではフィラメントの熱慣性のために特に問題になることは少ないが、放電ランプでは問題となることが多い。このため、電子機器用の蛍光ランプのほとんどは、20~70KHz程度の高周波点灯と蛍光体の残光を利用してフリッカの影響を逃れている。

(5)立ち上がり特性

電源投入から光が安定するまでの時間は、読み取り機能を必要とする機器の電源投入から使用可能になるまでの時間を支配することにつながるので重要な特性であり、例えば、水銀蛍光ランプではヒータで余熱をして立ち上がり特性の改善をはかったり、効率を犠牲にしても希ガス蛍光ランプを使用したりする。

(6)原稿面照度分布

読み取り光源の特性としては、読み取りセンサーが1:1の光学系であれば、照明対象物を均一に照明すればよいが、縮小光学系の場合はCOS4則の補正のために中央が低く、周辺が高い照度分布を照明光源の配光特性にもたせる事が望ましい。ハロゲンランプの場合は、このために配光に合わせてフィラメントを分布させているものもあるが、蛍光ランプの場合はほぼ均一であり、光学系の一部に遮光板等の手段を用いて配光分布を補正する。

(7)分光分布

モノクロのPPCやファクシミリのほとんどの機器では、黄緑色蛍光体(G-57 蛍光体,543nmにピークを持つ)が高効率,高負荷に耐える,道程が良いことから用いられる。

光順次点灯方式によるイメージリーダやファクシミリのカラー機器ではRGBそれぞれに相当する単色蛍光ランプ3本を順次点灯したりする。

光順次点灯方式以外のカラー機器ではRGBの各波長域に出力を持つ3波長域発光形が使われることが多い。

OCRでは原稿から必要な情報のみ選択的に読み取るために例えば印刷枠等の印刷時に特定の波長でドロップアウトが発生するインクで印刷しておき、特定の波長の光源で照明したりする。このために近赤外蛍光体や赤色蛍光体を使用した蛍光ランプやネオンの赤色発光を利用した希ガスランプが使われる。

3.1.2. 読み取り用に使われるランプの種類

3.1.2.1. 情報機器の読み取り光源として使われるランプの種類と用途を表3に示す。

表3 読み取り用に使われるランプの種類

3.1.2.2. 読み取り用ランプの概要

(1)熱陰極蛍光ランプ(水銀タイプ)

4端子構造の蛍光ランプであり、フィラメントを持ち、少なくとも起動時はフイラメントを加熱するために電流を流す。読み取り用のランプとしては内部にスリットを設けて輝度の向上や照射範囲の限定をはかることがある。水銀の発光を利用しているために、発光効率は希ガスタイプに比べ非常によく、管径は16Φ,8Φ程度が多い。特徴は発光効率が高く、光色の選択範囲が広く、大光量が得られるが、欠点としては安定器にフィラメント余熱回路が必要で複雑高価になる,光量の立ち上がりや温度特性が悪く、ヒータを利用して管璧温度を加熱したり,一定温度にコントロールしたり、起動初期に大きなランプ電流を加えたりすることがある。

(2)セミホット蛍光ランプ(水銀タイプ)

自己加熱型細管熱陰極と呼ばれ、2端子構造の蛍光ランプで冷陰極モードで起動し、点灯中は熱陰極動作で前記の熱陰極蛍光ランプに近い効率で動作する蛍光ランプである。構造上、冷陰極に近い細管化(現伏3Φ)が可能であり、熱陰極動作可能のため細管にもかかわらず冷陰極の5~10倍近いランプ電流を流すことが可能であり、高い輝度や光量が得られ、細管のためミラー等の光学系との相性も良く、小型のフイルムスキャナー等で使われる。

(3)熱陰極希ガス蛍光ランプ

キセノンガス中の放電で発生する共鳴励起線147nmの紫外線で蛍光体を励起するランプで熱陰極で動作する。管径としては6mm程度までの細管化が進んでいる。特徴としては放電媒体が希ガスであるため通常の温度範囲では周囲温度変化による光束変化はわずかであり、立ち上がり特性も極めて良い。また、水銀の輝線を含まないため色純度もよくカラ一化には有利である。欠点としては水銀に比べ発光効率が低いことが上げられる。発光効率の向上の努力がされており、ドライブ方法の工夫での効率向上が検討された2)

(4)外部電極希ガス蛍光ランプ

棒状封体の外側に1対の帯状の電極を持ち、内部にはキセノンを主体とした希ガスを封入し、1対の帯状の電極の隙間にスリットを設けた構造の蛍光ランプが近年開発され、読み取り光源で使われている。発光効率や立ち上がり特性,温度特性等もドライブを工夫された熱陰極キセノンランプと同等又はそれ以上である。内部の電極を持たないために点滅に強く、インバータも簡単な構造ですむなど長所が多い2)

(5)ハロゲンランプ

ハロゲンサイクルを利用して長寿命や高効率化をはかったフィラメント電球の1種である。特長としては、光量調整が容易、COS4則をフィラメントの分布で補償できる,温度特性が良い,立ち上がりが比較的早い,100W程度からKWまで各種の電力のランプが製作可能等であり、欠点としては発熱が多い。

3.2. 書き込み及び定着用光源ランプ

表1のOA機器のうち、光学式プリンター、複写機(アナログPPC,デジタルPPC,ジアゾ),ファクシミリ等の機器には書き込み及び定着のための光源としてランプが使用される。書き込み及び定着のための光源ランプと機器の関係を表4に示す。

これらの機器の画像の定着方法はゼオグラフィ方式,最近発表されたTA方式,古くからあるジアゾ方式でほとんどを占める。ゼオグラフィ方式の場合、定着用ランプはトナー定着の熱源として使われ、ランプとしてはほとんどの場合ハロゲンランプ(ヒータ)が使われるが、特殊な用途ではキセノンフラッシュランプが使われる3)

TA(サーマルオートクロム)方式の原理の概要は次の通り。カラー感熱方式の1種であり、カラー感熱紙にサーマルヘットで書き込み(発色)、紫外線で発色を定着させる。

発色層はイエロー,マゼンタ,シアンの3層であり、先ず、イエローに低い温度のサーマルヘッド(熱)で書き込み、UV(420nm)を照射し定着させ、次にマゼンタに中間の温度のサーマルヘッドで書き込み(360nm)を照射定着、最後に高い温度のサーマルヘッドでシアンを発色させ、フルカラーとなる。このように、360,420nmの波長を持つ熱陰極蛍光ランプが使われる4)

ジアゾ方式では高圧水銀灯や蛍光ランプが使われているがランプの説明は省略する。

表4 OA機器と書き込み及び定着のための光源ランプ

3.3. バックライト

OA機器,画像表示機器等のディスプレイとしてCRT,プラズマディスプレイ,液晶が多く使われ、そのなかで唯一非発光なディスプレイデバイスが液晶である。

液晶ディスプレイは、その薄型,軽量,低消費電力,カラー表示可能等の特長を生かして、オフィス、家庭、車中、屋外等の多くの場面で使用されている。薄型,軽量,低消費電力の特長を最大限発揮できるのは、反射形であり従来の電卓や一部のゲーム機器,PDA等の小型携帯機器に使われていた反射形モノクロパネルに加え、反射形カラー液晶パネルも発表されている。しかし、画像品質や視認性を大切にする用途や、拡大投射して使う用途では主として透過形液晶パネルがバックライトとともに使われている。液晶の使われ方には直視式と投射式,バックライト使用の有無がある。

バックライトの光源には、電球、LED、EL、蛍光ランプ、メタルハライドランプ等が使われている。直視形ディスプレイでは蛍光ランプ,投射形ではメタルハライドランプが主流である。表5にバックライトを使用する情報機器とランプの種類の概要を示す。

表5 バックライトを使用する情報機器とランプの種類

3.3.1. 直視形液晶用バックライト

パソコン,ワープロ等のディスプレイのバックライトには、液晶パネルの特長である薄形,軽量,低消費電力,高精彩,フルカラー可能,低透過率等の長所を生かし欠点を補うために、薄型,軽量,低消費電力,高輝度等の性能が要求される。表6に最近のバックライトへの要求を示す。なお、直視形液晶用バックライトの情報機器への用途では蛍光ランプが主力のため蛍光ランプについて記す。

ワープロ・パソコンでは薄型化のために冷陰極蛍光ランプと導光板を組み合わせた導光板方式が現在の主流である。液晶パネルの開口率の向上、導光板の改良、指向性シートの採用、冷陰極蛍光ランプの細管化等により冷陰極蛍光ランプ2灯式から1灯式になり、同等な画面輝度にもかかわらず消費電力は約1/2になった。米国のエナルジー・スター・プログラム等の影響もあり、機器の低消費電力化、ディスプレイの低消費電力化が促進され、ますます液晶の使用範囲の拡大とバックライトの低消費電力化の要求は一段と強くなっており、蛍光ランプの細管化,高効率化が望まれている。

モニター付ビデオカメラや液晶テレビ等の屋外使用携帯機器では従来、U形やW形の冷陰極蛍光ランプと反射ミラーを組み合わせた直下型のバックライトが使われていたが、小型化、薄型化等の要求を満たすために導光板方式が使われ始め、光源にはセミホット蛍光ランプが使われている。更に導光板方式にL型冷陰極蛍光ランプが使われるなどの動きもある。画面輝度350cd/m2以上の要求や低消費電力の要求、更には低温立ち上がり特性の改善などが望まれている。

ビデオカメラのビューファインダ(EVF)やHMD等でも、当初は直下式で直管蛍光ランプが使われていたが、その後、導光板方式等も検討され、最近は平面蛍光ランプが主流になっている。平面蛍光ランプの一層の高効率化,高輝度化が望まれている10)。

OA機器等の操作部等においては冷陰極蛍光ランプがその長寿命の特徴から使われているが、メンテナンス性の向上が望まれている。

その他、最近はナビゲーションシステム等に車載用液晶ディスプレイがつかわれ、高信頼性,高輝度の要求に対してW型冷陰極蛍光ランプが直下式として使われている。この分野では高輝度化の要求は強く、長寿命タイプの熱陰極蛍光ランプも使われている。

表6 液晶使用機器と蛍光ランプの種類,ランプへの要求5)

3.3.1.1. 直視型液晶用バックライトに使われる蛍光ランプ

バックライトには冷陰極,熱陰極、セミホットの動作モードの蛍光ランプが使われる。各電極動作モードによる特徴を表7に示す。

表7 電極動作モードによる特徴

(1)冷陰極蛍光ランプ

2端子構造での水銀を封入した蛍光ランプであり、熱陰極に比べ構造が簡単で寿命が長く、寿命末期の異常電圧上昇(加熱)等の問題もない。電極構造が簡単なために細管化がはかりやすく、導光板との適合性がよい。現在は外形2.6Φ内径2Φ程度までが使われているが細管化による発光効率の改善に限界があり、電極構造へのアプローチが検討されている。課題はγ作用の大きい電極であり、電極材料や形状の検討が行われている。低電流化の要求もあり、本格的な携帯情報機器への搭載にはランプ電流1mAで安定放電が求められ、電極構造を含めて検討が行われている。

(2)熱陰極蛍光ランプ

電極構造の複雑さから冷陰極蛍光ランプと同じ細管化は難しく、導光板との適合性が難しい。発光効率の点では冷陰極蛍光ランプに比べ優れているが、その電極構造からエミッターの塗布量,道程でのエミッターの消耗が寿命を左右する。管径を細くするとフィラメントが小さくなり、エミッター塗布量が減少する。長寿命化のために、フィラメントを3重コイルとし塗布量をかせぎ、始動余熱をしてイオン衝撃を和らげ、寿命(50%輝度維持)10000時間以上を達成した報告がある。

(3)セミホット蛍光ランプ

熱陰極蛍光ランプの細管化,長寿命化の取組のなかで発生した。熱陰極蛍光ランプの高輝度,高効率と冷陰極蛍光ランプの細管,長寿命を備えている。熱陰極同様のエミッターを保持したフィラメントコイルをスリーブ電極に収納した電極構造を持つ。フィラメントの線径はランプ電流により決まる。細いほど少ない電流で加熱され、陰極降下電圧が減少する。管外形3.1mmでランプ電流20mA,陰極降下電圧約20Vが得られており、冷陰極並みの細管で熱陰極動作が得られ、導光板との適合性も良い。

(4)平面蛍光ランプ

平面蛍光ランプはこれまでのべた蛍光ランプとは異なり、導光板や反射ミラー等の光学系を使うことなく、単独でバックライトとして使われる面光源である。四角い放電容器の両端に並行に電極が設けられ電極は冷陰極動作であり、パルス幅の狭い(約1µS)点灯をおこない電極全面で放電を発生させ面発光をさせている。直接バックライトとして使用出来るので薄型、高効率等の特徴があり、発光面サイズで0.5~6inまで発表されている。発光面サイズが大きくなるほど、耐圧強度確保のため構造的に重く、厚くなり、導光板方式との競争上不利になる。主にビデオカメラのEVF(0.5~0.7in)やHMD(0.7~1in程度),小型液晶TV(1.4in)などに使われている。

HMD用では10000cd/m2,10000時間以上の要求もあり、高輝度、高効率及び長寿命が平面蛍光ランプの課題となっている。

3.3.2. 投射型用バックライト

液晶ディスプレイの大型化の手段として、直視方式の場合液晶パネルの大型化の努力はなされているが、歩留り、コスト等の解決すべき間題も多く、40インチ以上のディスプレイには、液晶をライトバルブとする投影方式からのアプローチがされ、液晶の特徴である微細加工化と小型パネルのほうが歩留りも向上させやすい等を生かして、小型パネルの高精彩な映像を光学系を通して拡大投影し大画面を得る液晶プロジェクターが実用化されている。液晶自身は非発光であるので、投影光源が必要じあり、液晶の透過率の悪さ(TFTカラーで2~4%程度)から高輝度な光源が必要となる。光源のランプには、最終製品が価格的にローエンドで簡易なものにはハロゲンランプがつかわれ、比較的高価な製品や画像品質が重要な製品にはHIDが使われている。

3.3.2.1. 液晶プロジェクターの原理6)

液晶プロジェクターには液晶パネルを3枚使用したものと1枚使用したものとがあり、それぞれ三板式,単板式と呼ばれている。最近になり新単板式と呼ばれる方式が製品化された7)。三板式の構成は図1に示すように、光源からの光をダイクロイックミラーによって赤,緑,青の三原色に分離し、それぞれ専用に設けた液晶パネルを透過した光をハーフミラーで合成し、投射レンズにより、スクリーンに拡大投射する。単板式に比ベ、高解像で高照度がはかれる。単板式は構造を図2に示すように、光源からの光を赤,緑,青の三原色に分離することなく、スライド映写機のフイルムに相当する部分に液晶パネルを置き投射レンズによりスクリーンに拡大投影する。三板式に比ベ、構造がシンプルで小型、低コストになるが、解像度、画面照度では劣る。新単板式の構造は図3に示すように、光源からの光を少しずつ傾きの異なるダイクロイックミラーで赤,緑,青の三原色に分離し、単板式とおなじ構造でカラーフィルターを持たず液晶の前にマイクロレンズを置き、赤,緑,青の三原色の光をそれぞれの画素に効率良く当てて以後投影光学系を通して拡大投影する。この為、見掛けの開穴率が向上し、且つカラーフィルターでの減衰が無いために、単板であるにも係わらず画面の照度を三板式並みに向上させている。

3.3.2.2. 投射型用バックライト用光源ランプ

(1)光源ランプには、基本的に次の特性が要求されている。

①点光源で高輝度 ②色再現性 ③高効率 ④長寿命 ⑤小型 ⑥低価格リプレース時の光学調整を不要とするために、発光管と集光ミラーを一体化している場合が多い。

(2)投射型用バックライト用光源ランプの種類

①ハロゲンランプ

小型液晶プロジェクターや自動車のフロントガラスへの情報表示用プロジェクタ用に約20~300W程度のリフレクター一体型ハロゲンランプがつかわれている。

OHP用には約300W程度のダブルエンドのハロゲンランプが使われる。

②メタルハライドランプ

通常のテレビに相当する映像を投影する液晶プロジェクターには120~250W程度データープロジェクターには200~600W程度、ハイビジョン対応の特別な製品には400W程度のショートアークメタルハライドランプが使われている。実用化されている代表的ランプの仕様は次の通り。

  • ランプ形状:一重管ランプと集光ミラーの一体型
  • 封入物  :Dy-Nd-Cs系沃化物
  • 電力   :120~400W
  • アーク長 :3~6mm
  • 色温度  :7000°K以上
  • 寿命   :1000~2000時間(スクリーン照度維持率50%)
  • 点灯姿勢 :水平又は垂直
  • 点灯方式 :交流矩形波点灯

集光ミラー一体型メタルハライドランプの寿命に対してCRT並みの10000時間以上の寿命が要求され、長寿命化が最優先テーマであり、当面5000時間を目標に開発が進められている。

集光ミラー一体型メタルハライドランプにおける寿命を支配する原因として、発光管の白濁(失透)の影響が大きい。発光管白濁の原因は、高管璧負荷き条件下で希土類原子が介在して生ずる微結晶シリカ(クリストバライト)の生成である。

この対策として、発光管にアルミナセラミック等の反応性の低い材料の検討やDC点灯による希土類原子の介在を制御し長寿命化を進めている発表等がある8)9)

4.おわりに

光源を使う情報機器の分野と機器の種類を紹介し、情報機器に使われる光源(ランプ)の用途は大別すると、読み取り、書き込み、定着、バックライトの機能に分かれることを述ベ、これらの機能ごとに対象機器とランプの概要を述べ、機能から要求されるランプの特性、ランプの種類、ランプの概要について紹介した。

全体として、米国のエネルギー・スター・プログラム等の影響で省電力のための工夫が装置側,光源側、それぞれに必要であり、ランプ周辺にもその努力が求められている。

例えば、定着分野ではランプの替わりに、セラミックヒータと特殊フイルムを組合せ卜ナー定着の省電力化をはかった製品が発表されたりしている。バックライトの分野では蛍光ランプの本数が2本から1本になっている。

このように光源の性能向上が求められていると同時にややもすると他の代替手段にとって代わられることも生じかねない。光源(ランプ)の一層の発展で情報機器分野における光の応用範囲を更に広げられればと考える。

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