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光技術情報誌「ライトエッジ」No.26(2003年8月発行)

光技術動向調査報告書XIX

(2003年3月)

光技術動向調査報告書XIX/財団法人光産業技術振興協会
ディスプレイ-コンポーネント

東 忠利

光源(ランプ)

液晶プロジェクタ用光源は製品化より約10年間は交流および直流点灯のメタルハライドランプが中心的な光源として使用されたが、1998年から点光源性の優れた超高圧水銀ランプ(高輝度水銀ランプ)への変換が急速に進んだ。1998年には超高圧水銀ランプの入力電力定格はそれまでの100W、120Wに交流および直流点灯の150Wが追加され1)、翌年1999年には200Wランプも製品化された。一方、反射型液晶素子やDMDの実用化により、これらの画像素子を使用したプロジェクタのための大出力光源としてショートアーク方キセノンランプが使用されている。

ここでは2000年以降の、プロジェクタ用の超高圧水銀ランプとキセノンランプの進歩、発展について紹介する。

(1)超高圧水銀ランプ(高輝度水銀ランプ)

超高圧水銀ランプでは、入力電力の増大による高出力化、材料品質の向上による寿命特性の向上、水銀圧力の増大による赤成分の増大、前記項目の副効果としてのアーク長の短縮、交流点灯方式では電流波形の改良によるちらつきの低減、などの改良が行われた。またリフレクタ(反射鏡)の小型化、軽量化にも著しい進歩があった。これらについて詳述する。

  • (1)入力電力の増大による高出力化:直流点灯方式では150W、200Wに追加して、250W、275W、300Wランプなどの高電力化と130Wへの低電力化が行われた2)。また交流点灯方式では100~200Wランプに追加して220~250Wランプへの高電力化が行われた。
  • (2)材料品質の向上では石英ガラス中のアルカリ金属、特にナトリウムの除去が進み、耐圧特性の向上と寿命特性の向上が行われた3)。またタングステン電極中のアルカリ金属、特にカリウムの低減による寿命特性の向上が行われた。
  • (3)プロジェクタ用の超高圧水銀ランプ(高輝度水銀ランプ)が開発された初期には点灯時の水銀蒸気圧は150気圧程度であったが、石英ガラス中の不純物の低減や放電管設計の工夫などにより点灯時の水銀蒸気圧を200気圧前後に上昇することにより赤色成分が増大し、結果的にランプ光束の利用率が向上した。
  • (4)水銀蒸気圧の高圧力化によりアーク中の電界強度が増大し、アーク長を短縮してもランプ電圧を確保できるようになった。これと不純物の低減による寿命特性の向上との相乗効果により、アーク長の短縮が可能になった。例えば100Wランプのアーク長が初期の1.5mmからほぼ1mmへの短縮が可能になった4)
  • (5)アーク長の短縮に伴って、電極輝点(放電スポット)の移動によって発生するスクリーン照度の変化が顕著に現れるようになる。この照度変化の低減対策の一つが直流電流による点灯であるが、交流点灯のままでの低減対策として電流波形の工夫が行われた。例えば矩形波電流の切り替え直前に電流を増大し、電極温度を上昇させることによって輝点の大幅な移動を抑制する方法である5)
  • (6)またランプ点灯時にランプに高圧パルスを掛ける必要があるが、予備放電の形成などの方法によりパルス電圧を低減する提案が行われた6)。一方、リフレクタの小型化や軽量化のためにも、いくつかの改良が施されている。
  • (a)リフレクタ材質の硬質ガラスから結晶化ガラスへの変更
  • (b)リフレクタ内の空気冷却通路の設定
  • (c)前面ガラスの代用としてのランプ室の密閉化などである。

(2)キセノンランプ

反射型画像素子用の大出力光源として利用される1~2.5kWクラスのキセノンランプについては、キセノンガスの高圧力化による効率の向上、アーク長の短縮による光の利用率の向上、ランプ全長の短縮による光源の小型化、などが行われた7)

  • (1)従来のショートアーク型キセノンランプの常温時の封入圧は5~7気圧程度であったが、ランプ効率向上のために常温時封入圧が約10気圧程度まで高められた。これは電極封じ部の形状の改良によって可能になった。
  • (2)光の利用率向上のための点光源化のために、アーク長が平均20%程度短縮された。これは高圧力化によりランプ効率を低下させないで可能になったものである。
  • (3)ランプ設計の見直しによりランプ全長の短縮も行われた。これは従来の主要用途である映画館用の据え置き映写機では、小型化への要求はあまり強くなかったのに対し、データプロジェクタでは光源の小型化への要望が強いためである。

表に定格入力電力1kW~2.5kWのランプの特性例を示す。

ランプ特性の進歩の結果として単位ランプ電力当たりのスクリーン光束の向上に成果がみられた。なお、反射型画像素子を用いた比較的低出力のプロジェクタ用に使用されてきたセラミックス製キセノンランプは、高ワットの超高圧水銀ランプにとって代わられ、ほとんど使用されなくなった。

表 主要なキセノンランプの定格値

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