USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.30(2008年3月発行)

NGL 2007

(2007年7月)

実用化に向けたDPPの開発
Development of Discharge Produced Plasma EUV Source

堀田和明、佐藤弘人
EUVA平塚研究開発センタ 御殿場分室
〒412-0038 静岡県御殿場市駒門1-90
Kazuaki Hotta and Hiroto Sato
EUVA Hiratsuka R&D Center Gotenba Branch
1-90 Komakado, Gotenba, Shizuoka, 412-0038, Japan
k.hotta@ushio.co.jp

1. はじめに

ウシオ電機(株)はEUVA(極端紫外線露光システム技術開発機構)におけるEUV光源の開発に参加し、放電プラズマEUV光源(DPP:Discharge Produced Plasma EUV Source)の開発を行っている。既に、スタナンガス(SnH4)を用いた固定電極Sn DPPで、発光点出力702W/2πSr、繰り返し周波数8kHz、ドーズ安定性1.4%(σ、50pulse)を実現し、また、コレクタ、デブリシールド、クリーニング、などの重要要素技術の蓄積を図っている。現在、最終目標である集光点出力50Wの実現にむけ注力中である。一方で、高出力化する量産時の要求出力に対応すべく、レーザ融合型回転電極DPPの基礎技術開発を開始している。

EUVAはウシオ電機グループのドイツXtreme社とウシオ電機が製作したXe DPPをSFET(キヤノン殿製)に搭載すべく、Selete殿に導入した。ウシオ電機は、今後、Xtreme社との強力な連携を図り、量産用DPPの開発を進める計画である。

2. EUVAにおける固定電極型Sn DPPの開発

図1にEUVAで開発中のスタナンを用いるSn DPPの構成を示す。放電ヘッド、パルスパワー電源(図示せず)、スタナンガス供給装置、デブリシールド(DMT:Debris Mitigation Tool)、コレクタからなる。放電ヘッドは固定電極Z-ピンチ型で、固定電極において、5kHzを超える高繰り返しでSnの安定な放電に成功しているのはEUVAだけである。放電ヘッドの構造、特に放電空間へのスタナンガスの供給構造を高繰り返し動作用に改良し、また、放電入力エネルギー、電流波形およびスタナンの流量を最適化することにより、図2に示すように、8kHzの高繰り返しで、発光点パワー702W/2πを実現している。パルス間強度安定度は11%(σ)で、ドーズ安定性は1.4%(σ、50pulse)である。図3は長時間動作時での平均出力安定性の測定例(5 kHz、バーストモード)で、約40分の連続動作で出力の減少は見られていない。DMTの開発では、フォイルトラップとガスフロー制御を組み合わせることにより、図4に示すように、コレクタミラーのSn汚染速度を3×10-8nm/pulse とDMTを用いない場合から4桁以上低減することができた。一方で、Snの汚染により反射率が低下するコレクタミラーのクリーニング技術の開発を行っている。図5はクリーニングにハロゲンガスを用い、また、実際のコレクタと同形状のダミーコレクタを用い、in-situで行った実験結果である。先ず、Sn DPPの動作によりコレクタミラーを汚染させ、次にハロゲンクリーニング処理を行うというサイクルを繰り返した。60サイクル以上のクリーニング処理を行っても、コレクタの反射率がほぼ100%回復している。この結果と前記のDMTでのSn汚染速度の低減の結果を併せると、109 pulse以上のコレクタの寿命が期待できる。

現在、点光源に対して18.4%の集光が期待されるコレクタを製作し、いわゆるSoCoMo(Source Collector Module)としての集光点での評価実験を準備している。実際のプラズマの形状からはコレクタでの11%の集光が計算され、DMTとガスの透過率を70~80%とすると、発光点出力700Wで、集光点出力54~62 Wが得られることになる。

図1 固定電極Z-ピンチ型Sn DPP

図2 発行点出力の繰り返し周波数特

図3 長時間動作時の平均出力安定性(5kHz,バーストモード/出力フィードバック制御なし)

図4 DMXでのSn汚染低

図5 ハロゲンを用いたin-situクリーニング

3. EUVAにおける量産用高出力化DPPの基礎技術開発

現状で、量産時に必要となるEUV光源の出力は115Wから180Wと、一層の高出力が要求されている。図6はDPPで集光点180Wを実現するためのモデルで、Snを用いて変換効率CE=2%を得ることを前提とし、また、集光効率を、コレクタでの15%集光するとし、DMTとガスの透過率を75%として、11.3%と計算している。まず、1.6kWの発光点出力を得るためには80kWの放電入力を必要とするので、放電ヘッドの熱負荷が大きく、図1のような固定(単一対)電極型では電極寿命が著しく短くなる。また、コレクタで15%以上集光を得るためにはプラズマサイズを0.5mmφ×2mmL以下にしなければならないが、固定電極型ではこのような小プラズマサイズで大きな発光点出力を得るのが非常に困難であることがこれまでの実験で判っている。DPPにおいて高入力、小サイズプラズマを得て、量産用高出力を実現するためには、回転電極により高入力時における電極の長寿命化を図り、また、レーザによる小サイズプラズマの生成を目的とするレーザ融合型回転電極DPPの採用が必然になると判断される。

既に、レーザ融合型回転電極DPPの開発に着手している。図7はその最初の実験装置である。図中にあるドロップレットは未だ用いていず、回転電極の表面に置いたSnシート(図示せず)にレーザを照射し、蒸発させ、放電を得ている。図7のプラズマの可視像からはプラズマサイズが小さいことが観察される。出力は、初期的な値ではあるが、発光点15mJ/Sr(CE=0.8%)を得ている。10kHz動作では、940W/2πSrが得られることになる。次に、Snドロップレットを導入し、高CE化による一層の高出力化を行う計画である。

図6 180W DPPのモデル

図7 レーザ融合DPPの実験

4. おわりに-実用化に向けたDPPの開発

現在、スタナンを用いた固定単一対電極型DPPで、発光点出力700Wを得て、コレクタを設置した集光点出力特性(SoCoMo)の評価実験に入っている。目標の50Wが得られれば、EUV光源としてのこれまで最高出力となる。並行して、量産用DPPの実現に向け、レーザ融合型回転電極DPPの開発に着手し、既に、有望な結果を得ている。

EUVAはXtreme社とウシオ電機が製作した図8のXe DPPをSFET(キヤノン殿製)に搭載し評価すべく、Selete殿に導入した。ウシオ電機は、今後もXtreme 社との強力な連携を図り、量産用DPPを開発していく計画である。当面の目標は、2009年までのβ機用DPPの開発である。

図8 SFET搭載のXe DPP (写真はeleie殿提供)

謝辞

本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け,技術研究組合EUVAにおいて実施されました。両組織に深謝いたします。

また、本報をまとめるにあたり、EUVA御殿場分室研究員各位の協力を得ました。謝意を表します。

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