USHIO

光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集ウシオの新しい取組み第一回〉

半導体実装基板用・LEDディバイス用の露光技術

(2012年3月)

投影露光装置「UX シリーズ」を中心にした
基本モジュール設計の考え方

板羽 正行

1. はじめに

従来より、ウシオ電機では、プロキシミティ露光装置、一括投影露光装置、分割投影露光装置など、複数の異なるタイプの露光装置をラインナップしている。

ここでは、近年導入した装置開発コンセプトの一つであるモジュール設計の考え方について、実施例を交えて説明する。

2. モジュール設計とは何か

モジュール設計を説明する前に、まず、モジュールを定義しておく。

モジュールとは、交換単位、設計単位、組立・検査単位で分けた部品の集合体であり、装置は複数のモジュールで構成される。ここで注意しなければいけないのは、ユニットとの違いである。ユニットとは、単に部品を組み合わせてできる集合体である。これに対し、機能・設計単位でまとめたものがモジュールである。

モジュールの定義をまとめると、図1のようになる。

モジュール設計とは、このように定義された考え方に従って装置の構成要素を分割し、それぞれのモジュール単位で設計を行うことである。モジュール分けを行うことがスタートとなり、このように分けられたモジュール毎に複数の設計者が設計を行う。

それぞれは独立した設計、評価が可能となるため、周囲のモジュールとの干渉をそれほど考慮しなくとも設計を実施することができるようになる。

露光装置のモジュール分けの例を図2に示す。

図1. モジュールの定義

図2. モジュール分けの一例

3. モジュール設計のメリット

このようにモジュール設計を行うことで、以下のメリットが得られる。

(1) ダウンタイムの低減

生産設備に対しては稼動率の向上が求められている。ひとたび装置がダウンすると、多くの損害・機会損失を発生させることがあるため、いかに素早く復旧するかが重要視されている。

交換単位のモジュールの設計を行うことで、問題の発生したモジュールのみを交換することができ、ダウンタイムを低減することができる。

(2) リードタイムの短縮

近年の製品寿命の短期化を受け、装置についても短納期が要求されている。従来は、組立てられたユニットを装置に組み込み、装置の中でそれぞれのユニット間の調整を行っていた。

組立、検査単位のモジュール設計を行うことで、複数のモジュールの組立、検査を平行して進めることができるようになった。そのモジュールを装置内の決められたインターフェース部に取り付けることで、モジュール間の調整も不要になり、装置調整期間を短縮することができる。

(3) 開発期間の短縮

ウシオ電機では、コンタクト/プロキシミティ露光装置、一括投影露光装置、分割投影露光装置と、複数のラインナップを揃えている。かつては、それぞれの装置を構成するユニットが装置毎に存在し、開発期間も長かった。

設計単位のモジュール設計を行うことで、モジュールを複数の装置で共通化でき、開発期間の短縮が可能となった。また、モジュールを共通化することで、繰返し生産が可能となり、品質の向上にもつながる。

4. モジュール設計の実例

(1) 開発した装置でのモジュール設計例

図3はモジュール単位で交換する場合の一例を示す。図示はしていないが、他のユニットを取り外すことなく、モジュール単位で交換が可能な構造となっている。

また、図4にウシオの装置のラインナップと共通モジュールの構成を示す。

プロキシミティ露光装置(UX-3シリーズ)、一括投影露光装置(UX-4シリーズ)、分割投影露光装置(UX-7 シリーズ)と、異なるタイプの露光装置でプラットフォーム、搬送系を共通モジュール化している。また、アライメントを行うワークステージ(WS)、アライメントマーク観察のための顕微鏡(カメラ)駆動部は、プロキシミティ露光装置、一括投影露光装置で共通モジュール化を行っている。

また、モジュールを組み替えることで、プロキシミティ露光装置から一括投影露光装置への生産変更も可能である。

図3. モジュール単位での交換例

図4. 装置ラインナップと共通モジュール構成

(2) アップグレードについて

装置を購入されたお客様から、なるべく長く装置を使いたいというご要望をいただくことがある。しかし、微細化の進行により、数年で装置を更新しなければいけないのが現状である。

今回導入したモジュール設計によって、新規機能をモジュール単位で実現する、また、それぞれのモジュールの性能を上げることで、装置性能を向上させることが可能となった。

すなわち、プラットフォームはそのまま(設備の新規更新は行わない)でモジュールを交換もしくは追加することで、装置の高性能化、新規機能の追加を可能としている。

5. まとめ

以上説明したように、モジュール化は多くのメリットがあり、これを実践したモジュール設計を装置開発の基本としている。

今後も、ウシオ電機の露光装置はモジュール化を推進し、開発を進めて行く予定である。


モジュラー型ステッパ「UX-55」

友永 竹彦

1. はじめに

ウシオ電機は1999年に世界で初めてプリント基板用ステッパ「UX-5シリーズ」をリリースして以来、継続して技術開発およびノウハウの蓄積を続けてきた。現在発売されている「UX-55シリーズ」は第6世代にあたる装置である。

この第6世代の装置 UX-55シリーズより、モジュラー型プラットフォームを採用し、業界およびお客様のニーズの変化に、柔軟かつ迅速に対応できるようになった。

ここでは、変化するPC・スマートフォン業界のニーズと、それに対応するモジュール開発について紹介する。

2. FC-BGA技術動向

UX-5シリーズは、現在、パソコンのCPU向けインターポーザー基板の量産用に広く使われている。

量産品の配線のデザインルールは約20µmピッチ、ライン&スペース(L/S)にて約10/10µmの配線ルールが用いられているが、2015年には、L/Sにて約5/5µmまで微細化するロードマップが示されている。

また、モバイル製品の薄型化に対応するため、インターポーザー基板の薄型化が求められている。

3. UX-5露光装置への要求

UX-5は、15µm以下のL/Sでの量産が求められるインターポーザー基板向けに使われている。この領域になると、現在のダイレクトイメージでは高い歩留まりで量産することが難しく、従来はコンタクト露光装置が使われていた。

コンタクト露光装置では、マスク汚染による歩留まり低下、歩留まり低下を防止するための定期的なマスク清掃およびそれに伴う装置のダウンタイムが問題となり、生産性を向上させることが困難になっていた。また、接触によるダメージにより、定期的なマスク交換が必要なため、ランニングコストの低減も課題となっていた。

また、有機インターポーザーでは基板の伸縮があるため、コンタクト露光ではアライメント精度不足による歩留まり低下が発生していた。コンタクト露光装置でアライメント精度を向上させようとした場合、伸縮によるアライメント精度の低下を補うために、分割露光が行われるが、コンタクト露光装置特有の真空吸着待ち時間ロス、低い照度および遅いステップ動作により、生産性が大幅に低下するという問題があった。

UX-5は、レンズを用いて投影露光することにより、マスク汚染による歩留まり低下を排除し、レンズの変倍機能を用いて基板の伸縮に対応することにより、歩留まりの向上を実現した。

また、最大Φ355mmの投影レンズとステッパステージの採用により、高速な4 分割露光を実現し、最大100mW/cm2という高照度照明系を組み合わせることにより、コンタクト露光装置を上回る生産性を達成した。

これらの特徴により、UX-5は最先端有機インターポーザー量産に広く使用いただいている。

4. 各モジュールユニット開発について

UX-55シリーズから採用したモジュラー型プラットフォームにより、顧客ロードマップに合わせて、各モジュールの開発を行っている。

(1) 光源ユニット

ウシオ電機は、自社で露光用光源の開発・製造を行っているメリットを生かし、お客様ニーズと投影レンズユニットからの要求に最適化した光源を搭載し、最高の性能を高精度かつコンパクトに実現している。今後の高精度化で、ショット数が増える場合には、更なる高照度化でスループット低減を防止する開発を行っている。

▲ モジュラー型ステッパ「UX-55」

(2)独立変倍ユニット

有機インターポーザー基板は、XYで伸縮量が異なるという特徴を持つため、UX-5にはXY独立変倍機能を搭載している。

(3)投影レンズユニット

すでに5µmL/S開発に向けた開発装置(PT2レンズ)を出荷済みであり、現在は、更なる高解像化およびスループット向上に向けた開発を行っている。

(4)アライメントユニット

インターポーザー基板のアライメントマークはレーザービアなどで形成され、画像認識が不安定になりがちであるが、照明系の工夫と、アライメントアルゴリズムの自社開発により、安定したアライメントを実現している。

(5)搬送ユニット

薄いもので60µm、厚いもので2mm、2kgまでの反りうねりなどのある有機基板が搬送できる、自社開発の搬送ユニットを組み込み、安定稼動を実現している。基板の状態は顧客ごとに異なるため、モジュラー型プラットフォームを活用し、カスタマイズにも柔軟に対応している。

5. まとめ

今後も有機インターポーザー向けステッパの先駆者として、微細化ロードマップを推進するために、各モジュール開発を継続していく。


一括投影露光によるリソグラフィ装置
「UX4-LEDs」

田中 良英

1. はじめに

LED市場の今後数年間は、大きな技術的進化と急激に下落するコストが強力に成長を支え、高輝度LEDチップは年平均28.2%伸び、売上高は2010年の89億ドルから、2015年には257億ドルに達すると予測されている。

こうした急成長が期待される市場環境の中で、ウシオ電機は、高輝度LEDの量産に最適な一括投影露光によるリソグラフィ技術を開発し、「UX4-LEDsシリーズ」として製品化した。

2. サファイアウェーハの大口径化とリソグラフィ装置に対するニーズ

LEDチップメーカーは、ワークサイズUPによるコストダウンと1ウェーハからの歩留まり向上を課題に、生産性UPを進めている。

従来のLED向けリソグラフィでは、半導体製造用のステッパやマスクアライナが使用されている。しかし、ステッパは、ウェーハが大口径化するとスループットが低下するという致命的な弱点があり、マスクアライナでも、ウェーハサイズの大口径化に伴いサファイア基板の反りが大きくなり、ワークとマスクの接触による異物の付着による歩留まりの低下、マスククリーニングやマスク交換で生じるダウンタイムによるスループットと歩留まりの低下という問題が発生する。

製造コストの大幅な低減が必須とされるLED製造業界では、このような難題に対応できるLED専用の高スループットリソグラフィ装置のニーズが、近年非常に高まりつつある。

3. ウェーハの大口径化に対応したリソグラフィ技術

ウシオ電機がLED製造専用に開発した一括投影露光によるリソグラフィ技術は、ステッパやマスクアライナの欠点を解決するだけでなく、ウェーハを大口径化するだけでスループットを大幅に向上させることが可能となる。

急成長を続ける高輝度LED市場において、高品質・低コストを実現するには、ウシオ電機のリソグラフィ技術は、非常に有効な手段といえる。

(1)高コストパーフォーマンス

  • ・ LED製造専用に設計されているため、半導体製造用ステッパをLED製造に使用する場合と比較して、初期費用を大幅に低減
  • ・ 従来のステッパと比較して、ランニングコストを80%低減することができ、極めて低いコスト・オブ・オーナーシップ(CoO)を実現

(2)「UX4-LEDs FFPL 200」の中核技術

一括投影露光によるリソグラフィ技術を採用した最新機種「 UX4-LEDs FFPL 200」は、直径200mmの一括プロジェクションレンズを搭載し、200mmウェーハを毎時120枚処理することが可能である。また、このUX4-LEDs FFPL 200にはウシオ独自の要素技術を採用しており、 歩留まりと品質の大幅な向上も実現している。

  • ・ 最大200mmウェーハまでウェーハサイズの設定変更が自動で可能なため、 既存のウェーハサイズからの切り替えもダウンタイムなしで実現
  • ・ 完全非接触のため、マスクへのダメージがないだけでなく、クリーニング・交換も不要
  • ・ 透明電極等の視認の難しい低コントラストマークでも検出可能な特殊アライメント機能(図2)
  • ・ 反ったウェーハに対応可能な独自の吸着ステージ(図3)
  • ・ 反ったワーク、厚膜レジストに対して、安定的にパターニング可能な深い焦点深度
  • ・ 将来の拡張を容易にするモジュラープラットフォーム
  • ・ LEDウェーハ・レベル・パッケージングをサポートする裏面アライメント機能をオプションで提供
  • ・ 大容量マスクライブラリ・チェンジャーを装備し、マスク交換の全自動化を実現

図2. 視認性改善実績( ITO膜、レジストの塗布ムラ)

図3. ウェーハ反り対応(反りワーク平坦化吸着)

4. ウシオのLED製造用リソグラフィ装置

ウシオ電機では、LED製造専用リソグラフィ装置として、2010年11月に150mmウェーハ対応の「UX4-LEDs」を発売し、日本、韓国、台湾、中国の大手LEDメーカー各社の量産に使用されており、 高性能と高信頼性が実証されている。「UX4-LEDs FFPL 200」 は、この後継機種で、200mmウェーハまでが対応可能となる。

また、垂直構造の高輝度LEDの性能向上とコスト削減の両方を実現する、サファイヤ基板からGaN膜をKrFレーザを使用して熱分解によって剥離するレーザリフトオフ装置「UX4-LEDs LLO150」も、2011年7月のセミコンウェストで発表した。

ウシオ電機では、高輝度LED製造において、高品質と低コストを実現するうえで不可欠なリソグラフィ技術とプロセスの開発に、今後も積極的に取り組んでいく。

▲ UX4-LEDs FFPL

▲ UX4-LEDs LLO


マニュアル式とオート式の露光装置

大澤 正良( ウシオライティング)

1. はじめに

近年、LEDの性能の向上や低価格化に伴い、液晶TV、モニタのバックライト用、一般照明用光源、車載照明用と、さまざまなアプリケーションでLED市場が急激に拡大している。

なかでも中国では、2009年の『十城万蓋』と称する政府プロジェクトで、10都市へ100万灯のLED照明を設置することを掲げるなど、特に拡大している。

このような活況を呈している中国LED市場では、量産性の高い露光装置に対する需要が大きく、ウシオライティングでは、それに応えるべく、マニュアル式からオート式までの露光装置をラインアップさせた。

従来は、人海戦術的にマニュアル式露光装置を複数台ならべる生産方式を採っていた中国においても、人件費が高騰するだけでなく、工場の立地条件が原因で人材確保が難しくなりつつあることから、露光装置には、安定した稼動、高解像度、高重ね合わせ精度が求められるようになってきた。

そこで、生産性を重視し、高スループットを実現する露光装置を独自に開発し、製品として完成させた。

2. マニュアル式とオート式の特長

マニュアル式とオート式の露光装置について、それぞれの特長を説明する。

(1)マニュアル式露光装置

マニュアル式露光装置とは、オペレータ自身がウェーハをセットしたのち、レバーやツマミを操作して、フォトマスクとウェーハを接触させたり離したりするプロセスを顕微鏡で観察し、その顕微鏡から映し出される画像を見ながら、フォトマスクとウェーハの位置合せを行い、露光する装置である。

LEDチップの量産工場では、多くの場合、24時間フル生産を行っている。そのためオペレータは3直の交代勤務となり、マニュアル式露光装置では、オペレータそれぞれの技量の差によって不良が発生する恐れがある。

そこで、マニュアル式であっても安定した製品の生産ができるよう、今回、多くの自動化機能を取り入れた。

(2)オート式露光装置

オート式露光装置は、オペレータがフォトマスクとウェーハをセットし、あらかじめ記憶されている露光レシピを選択するだけで、装置がウェーハの搬送から、フォトマスクとの位置合せ、露光までを行う。オペレータの技量に関係なく、精度の高い製品が安定生産できる。

今回、独自開発の搬送ロボットを3台搭載した方式を採用し、処理能力190枚/hrs.という高スループットを実現した。

3. マニュアル式露光装置「UPE-1102LU」

「 UPE-1102LU」は、ウェーハサイズ2インチ対応のマニュアル式露光装置である。

▲UPE-1102LU

4インチのガラスマスクを使用し、オペレータがフォトマスクとウェーハのアライメントマークを顕微鏡で撮像し、モニタに映し出された画像を見ながら位置合わせを行う。露光ギャップを設定し、露光スイッチを押すと自動で顕微鏡が退避、ランプハウスが所定の位置に移動し、設定光量露光を行ったのち、自動退避をする。

特長

  • ①フォトマスクとウェーハの平行出しは、ウェーハテーブルを空気の層で浮遊させ、アライメント機構部に内蔵されたエアバネでフォトマスクに正確にコンタクトする方式を採用している。
  • ②アライメント顕微鏡は、アライメントマークが探しやすいようにロック機構付の自在移動方式を採っている。また、ズーム式の高倍率タイプで、照明はレジストにより色の選択可能なLED照明を搭載している。

  • ③作業のタクトを高めるための、ランプハウスとアライメント顕微鏡が自動で進入、退避する設計により、生産性アップを実現させた。

4. オート式露光装置「UPE-1225ATL」

「 UPE-1225ATL」は、ウェーハサイズ2インチ対応の全自動の露光装置である。

従来のウェーハ搬送方式で用いられる多間接ロボットに代えて、独自に開発した搬送ロボット3台を搭載、処理能力190枚/hrs.という高スループットを実現した。また、新開発のアライメント画像処理には、任意座標指定のサーチおよびインテリジェントθサーチを複合して行うオートアライメントを採用した。さらに、安定した視認性を実現するため、顕微鏡のハロゲン照明についても、画像処理によって照度減衰のフィードバックを行う新機構を搭載している。

▲ UPE-1225ATL

特長

  • ①定評の高い500Wマルチライト光源を搭載している。
  • ②基板供給、アライメント、露光、基板排出を自動で行うウェーハ搬送には、新開発のロボット3台を搭載し、2インチウェーハに対してクラストップの処理能力190枚/hrs.を実現している。
  • ③マスクとウェーハの平行出しは、補正機能板で露光ごとに可能である。
  • ④アライメント画像処理には、レシピにより登録された10個のリトライ座標を順番にサーチするインテリジェントサーチ機能を採用した。
  • ⑤1st.露光用のラインアライメント機能も搭載した。
  • ⑥露光方式として、ソフトコンタクト、プロキシミティ、ハードコンタクト(真空密着)が可能である。
  • ⑦Φ2インチ、Φ4インチウェーハ基板の段取り換えも容易にできる。
  • ⑧顕微鏡のハロゲン照明は、画像処理によって常に最適な明るさを確保、さらに、低コントラストマークにも対応する。
  • ⑨トラブルのエラーメッセージを、操作パネルに表示させることができる。

例えば、下の様に移動座標を登録した場合
(アライメントステージ移動の座標)
For example When input such a position. (Alignment stage movement position)

1~10まで順番にサーチ移動を行います。
Search it from 1 to 10 in turn and move

5. おわりに

これまで培ってきた、低コストによる装置開発の経験を活かし、新たなマニュアル式露光装置、オート式露光装置、および周辺機器の開発を行った。

今後も、LEDチップ基板のファイン化に適した、高性能な露光装置を提案していきたい。


一括投影露光装置「UX4-ECO」

友永 竹彦

1. はじめに

世界的なCO2排出量抑制ニーズの高まりや、電気自動車、自然エネルギーによる発電ニーズの高まりにより、電気を効率よく使うために、性能の良いパワー半導体へのニーズが高まっている。

ここでは、パワー半導体向け露光装置へのニーズ変化およびウシオ電機の取り組みについて説明する。

2. パワーデバイスの技術動向

パワーデバイスは、昨今の需要の高まりに応じて生産数量が増加している。また、コストダウンも求められている。その中でも、日本勢が高いシェアをもつIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)については、素子の高耐圧化、高速化および電力ロスの抑制などの技術の進展に伴い、リソグラフィプロセスにおけるニーズとしては、ウェーハ薄型化、大口径化および裏面加工プロセスの追加が同時並行で進んでいる。

従来は、裏面アライメント付の露光装置はプロキシミティアライナしか選択できなかった。しかし、マスクコンタミネーションによる歩留まり低下などの問題に加え、昨今の生産数量増加と歩留まり向上ニーズの高まりにより、投影型の露光装置が求められるようになってきている。

3. 露光装置への要求

生産性向上のために、5/6インチ→8インチ化が進展。またウェーハの更なる薄型化、裏面プロセスの追加が同時進行している。また、歩留まり向上ニーズが高まっており、8インチの薄型ウェーハの裏面を、高精度に生産性高く投影露光するニーズが高まっている。

4. パワーデバイスのニーズに対応する各モジュールユニットの開発について

(1)裏面/IRアライメントユニット

ウシオ電機では、従来より定評のある投影露光と裏面アライメントの組み合わせに、IRアライメント機能を追加することによって、さまざまなプロセスに柔軟に対応することを可能にしている。

(2)高精度裏面アライメントモジュール

上述の裏面アライメント機能に加え、独自開発の低歪投影レンズモジュールを組み合わせ、1.5µm以下の裏面アライメント精度を実現。RC-IGBT等の裏面プロセスに対応している。

(3)特殊ウェーハ搬送モジュール

薄型化するIGBT基板の搬送に対応するため、RIB付きウェーハなどの搬送に対応している。

(4)従来露光装置マスク活用モジュール

お客様が従来から使用している投影アライナ用のマスクを活用できる機能を開発。従来プロセスからの増産対応、切り替え対応を容易にしている。

5. まとめ

今後も、成長し続けるパワーデバイス市場のニーズに対し、モジュールプラットフォームを活用し、柔軟かつ迅速に、個別モジュール開発を行っていく。


MEMS分野の露光装置

亀田 利孝

1. はじめに

MEMSは、携帯機器、自動車、医療、環境などのアプリケーションに幅広く拡大している。それに伴い、露光装置へのニーズも多様化している。

マイクロマシン・MEMSと一口に言っても多種多様なデバイス構造がある。また、生産数量の幅は、開発・少量試作から、月産数万枚規模の量産まで多様化している。それらに対して、当社は最適な選択肢を提供すべくラインナップを拡充してきた。特に3次元加工、両面加工に適しており、かつ量産性を重視してマスクとワークが非接触である一括投影露光装置を中核として、各種センサ、プリンタヘッド加工、水晶振動子などの量産、および開発・MEMSファウンドリー向けに、それぞれに最適にカスタマイズした装置を多数納入している。

本稿では、MEMSに求められる露光性能・機能を整理するとともに、当社の露光装置のラインナップと特長を紹介する。

2. 露光方式について

各種露光方式および性能比較を(表1)に示す。

  • (1)コンタクト・プロキシミティ
  • (2)一括投影露光
  • (3)分割投影露光

の3種類に大別される。

露光装置の性能(解像性能・重ね合わせ性能)や生産性(処理能力・装置コスト)は、露光方式によって大きく左右される。

表1. 各種の露光方式と性能比較

(1)コンタクト・プロキシミティ

装置構成がシンプルなため、低イニシャルコストであることがメリットである。露光性能は、コンタクト露光で解像力1µm、アライメント(表面)精度±1.0µmを達成する。ただし問題は、マスク・ワークが接触あるいは近接するため、量産向には、マスクへの異物付着、連続欠損防止などへの考慮が必須である。

(2)一括投影露光

深い焦点深度を持ったレンズ光学系設計を採用した場合、段差露光、高アスペクト露光が可能となる。解像力は、露光面積や露光波長などによって異なるが、Φ8インチを全面一括露光する場合、おおよそL/S=3µmである。またマスク・ワーク非接触のため、マスクダメージが発生せず、高い歩留まり、生産性が得られる。

(3)分割投影露光

高い解像力、アライメント精度を有した縮小投影ステッパに代表される。ただし、露光面積は小さく、焦点深度も浅い。

3. MEMSに求められる露光性能・機能

MEMSデバイスの中には、3次元加工、両面加工、高精度の表裏パターンの重ね合わせ、ワーク基材のそり・伸縮・特殊材質など、通常の薄膜Siデバイスとは異なる要求が多い。それぞれについて露光装置としての対応について述べる。

(1)深い焦点深度

代表的には、段差露光および高アスペクト露光がある。200µmの段差パターンを(図1)に示す。パターンの上面・下面にパターン形成するためには、深い焦点深度を持った投影光学系が必要である。従来のプロキシミティ露光の場合との比較を示す。プロキシミティ露光方式には焦点深度がないため、段差露光には適さない。

(2)裏面アライメント

デバイスの両面に加工を行う場合、両面同時露光方式が量産に最適である。

デバイス表裏面に露光するパターン(上下マスク)同士をあらかじめ位置合わせし、基板両面を同時に露光する。両面を一括で露光するため、表面・裏面を各々露光する場合に比べ、工程が半減し生産性が向上する。さらに、表面・裏面マスク同士をあらかじめアライメントし合わせるため、重ね合わせ精度が向上するメリットもある。

(3)重ね合わせ精度の向上

総合重ね合わせ精度には、以下の3点が関係する。

  • ・ アライメント(パターンマッチング)精度
  • ・ 露光ステージの精度
  • ・ 投影光学レンズの歪

上記のそれぞれの精度向上により、総合重ね合わせ精度±1µm以下を、一括投影露光装置でも対応できるようになった。

4. 当社の露光装置ラインナップと特長

求められる性能(解像力、重ね合わせ精度、生産性)およ びコスト要求に応じて、最適な露光方式を提供している。

(1)コンタクト・プロキシミティ露光装置(UX-1およびUX-3シリーズ)

  • ・ ハードコンタクトモードで、解像力1µm(ポジ1µm厚レジスト)を達成
  • ・ 線幅安定性は、L/S=5µm寸法に対して、±3%(±0.15µm)を達成(真空コンタクト、ポジ型液状レジスト1µmt、面内20点測定)
  • ・ 処理能力 毎時120枚(2ndアライメント)を達成
  • ・ 開発・少量試作用のマニュアルアライメント・搬送系のUX-1シリーズ
  • ・ 量産向けオートアライメント、オート搬送系のUX-3シリーズ

(2)一括投影露光装置(UX-2およびUX-4シリーズ)

  • ・ 深い焦点深度(DOF±50µm)設計
  • ・ 大面積一括露光(最大Φ8インチ一括露光)
  • ・ 総合重ね合わせ精度±1µm(Φ8インチ全面一括)
  • ・ 高スループット 120枚/時以上(2ndアライメントにて)

(3)分割投影露光装置(UX-7シリーズ)

  • ・ 総合重ね合わせ精度 ±0.5µm一括投影露光よりも、さらなる高解像、高位置合わせ精度向上ニーズに対応
  • ・ 最大ウェハ径 Φ8インチに対応
  • ・ 一般の1/5縮小投影ステッパの4倍のショットエリア(□44×44mm)を確保
  • ・ フットプリントは、一般的なコンタクト露光装置と同等を達成(2.2m2 Φ8仕様)
  • ・ 一般的なステッパでは対応困難な裏面アライメントが可能

図1. 段階露光サンプル

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