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光技術情報誌「ライトエッジ」No.36〈特集ウシオの新しい取組み第一回〉

タッチパネル製造におけるキュア技術

(2012年3月)

タッチパネル製造におけるキュア技術

飯澤 菜穂

1. スマートフォンの市場の伸び

Apple Inc.から発売されたi Phoneやi Padの影響を受け、日本でも新製品の発売が相次いでいる。携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの割合は、すでに半数を超えている状態だ。図1からも分かるとおり、スマートフォン市場の成長率は高く、2012年にはLCDTVに次ぐ市場となっている。

図1. ディスプレイ世界市場(金額)動向
(The 21st Display Search Japan Forum (July 27-28, 2011) より引用)

2. スマートフォンとキュア技術

この注目されているスマートフォンにも、ウシオ電機のキュア技術が使用されている。それは、スマートフォンの特徴ともいえる表示部分である。実際に操作する際に触るカバーパネルとタッチパネル、タッチパネルと液晶パネルの間に樹脂を入れ、UV硬化をさせている。

間に樹脂を入れる理由はいくつかあるが、主に視認性・耐衝撃性の向上が挙げられる。間に入れる樹脂の形態には、大きくわけて2種類ある。シート状に加工された物と液状の物である。

カバーパネルには、黒などの印刷が施されているため段差があるが、この段差を吸収しやすいのが液状方式である。最近、採用率が伸びており、使用されている液体にはUV硬化型が多いため、ウシオのキュア技術が役に立っている。

この方式はスマートフォンだけではなく、タブレット端末、パソコン、テレビなどに展開されつつあり、今後はますます用途が広がっていくと考えられている。製品ごとに出てくる様々な課題を解決し、ユーザに喜ばれるキュア用装置を提案していきたい。

3. ウシオのキュア用装置

ウシオのキュア用装置のうち、「スポットキュア」と「ユニキュア」を紹介する。

「スポットキュア」は、点光源の超高圧UVランプを使用しており、ファイバー等によって光を取り出す装置である(図2参照)。ワークの条件に応じて、ファイバーの分岐数、照射径、長さなどが調整できる。

「ユニキュア」は、線光源を使用した装置であり(図3参照)、「スポットキュア」と比較して大きい面積を照射することができる。ランプを内蔵した灯具をはじめ、冷却用ブロア、電源をセットで販売しており、ランプはメタルハライドランプと高圧UVランプの2種類がある。上述したスマートフォン用では、主にメタルハライドランプが使用されている。

図2.「スポットキュア」概観図

図3.「ユニキュア」灯具概観図

4. プロセスにおけるウシオのキュア用装置

次に、この2種類の装置がどのように使用されるのか、簡単に説明する。

まず、2枚のパネルを貼り合わせた直後に、仮固定を行う。(以下このプロセスを“仮硬化”と呼ぶ)パネルがずれない様にするためである。固定方法はいくつかあるが、点で数箇所固定する場合には「スポットキュア」、全面で固定する場合には「ユニキュア」が使用されている。仮硬化においては、完全に固めるわけではないので、剥がしてやり直すことも可能である。(図4)

仮硬化が済めば、次に、完全に固めるプロセスへと進む。(以下このプロセスを“本硬化”と呼ぶ)ここでは主に「ユニキュア」が使用されており、コンベアに載せてワークを搬送する場合と、ステージに載せて一括照射する場合がある。この本硬化は最後の仕上げとなるため、非常に大切なプロセスとなる。特に、高温により表面のパネルが溶けたり、液晶に不具合が起きたりなどの問題が起きないようにするため、ウシオの技術を駆使した装置を提供している。

仮硬化と本硬化のほかに、“側面硬化”を取り入れるユーザもある(図5参照)。貼り合わせた後、上からのUV照射のみでは印刷の下層が固まりにくいという問題があるためである。

代表的な方法としては、「スポットキュア」で横から当てる方法がある。「スポットキュア」にライン状のファイバーをつけて、細い隙間に当て込むのである(図6参照)。標準仕様の装置もあるが、製品ごとに樹脂の膜厚や印刷の幅などが異なるため、ユーザの要望に応じて、ファイバーの設計を行うことが可能である。

以上の説明から分かるように、ウシオ電機は仮硬化、本硬化、側面硬化のすべてに提案可能な光源を持っている。他にも、プロセス管理に必要な照度計やパネルの透過率なども測定できる分光放射照度計も扱っていることから、プロセス全体の提案が可能であるところが強みである。また、「スポットキュア」「ユニキュア」は共にランプの装置であるが、LEDの装置も扱っているため、要望に応じてLED光源を提供することも可能である。

今後、スマートフォン市場が伸びていくにつれ、従来と異なる材質のパネルや様々な形状が出てくることが予想される。ウシオ電機の光源を通じて、それぞれのプロセスに貢献していきたい。

図4.仮硬化と本硬化の流れ

図5.側面照射

図6.ラインファイバー(標準品)

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