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光技術情報誌「ライトエッジ」No.38〈特集号第三回〉 2012年10月発行

MEMSの光

マイクロ流路の光成形技術

鈴木 一好

1.はじめに

マイクロ流路チップは、バイオ、医療、分析等の反応、 分離、検出操作をマイクロスケール化してチップ上に集 積したものであり、回転傾斜露光法を用いて作製され る。回転傾斜露光法とは、マイクロ流路チップ等の三次 元微細構造物を、単一なマスクパターンから紫外線露 光を使って作製する技術である。

本稿では、回転傾斜露光法を用いたマイクロ流路 チップの作製技術について記述する。

2.回転傾斜露光法プロセス

図1に回転傾斜露光法を用いた三次元微細構造物作製プロセスを示す。

レジストを塗布したフォトマスクを、露光光に対して傾斜させた回転ステージに固定する。

ステージを回転させながら、フォトマスク側から斜めに露光光を照射する。

フォトマスクを現像すると、露光した部分が除去され(または残り)、三次元微細構造物が得られる。

回転傾斜露光法は、流路幅が数~数十μmで、壁面が傾斜した三次元微細構造物を得意とし、傾斜角度も0~50°の範囲で選ぶことができる。

また、流路深さと液だまり深さが異なる場合でも、作製プロセスを数段階に分けることで、対応が可能となる。

図2は段差構造を持ったマイクロ流路チップの作製例である。

図1.回転傾斜露光法プロセス

図2.回転傾斜露光法で作製した流路チップのSEM画像

3.回転傾斜露光法と従来技術の比較

回転傾斜露光法は、従来技術のレーザ光造形法や切削法と比較しても、流路パターンの柔軟性、加工時間の短縮、低コスト化が実現できる可能性がある。

表1に、回転傾斜露光法と他の技術との比較を示す。

図3のように、従来技術の切削法でマイクロ流路チップ金型を加工する場合の課題も、回転傾斜露光法を使えば解決する可能性がある。

図4に、回転傾斜露光法によって得られた三次元微細構造物を、プラスチック射出成型金型にする方法のひとつを紹介する。

表1. 回転傾斜露光法と他の技術の比較

図3.マイクロ流路金型機械加工時の課題

図4.フォトリソグラフィーによるマイクロ流路金型作製フロー

4.まとめ

今後、回転傾斜露光法によるマイクロ流路チップ作製技術を進化させ、さらなる複雑な形状の作製と低コスト化を目指して、開発を進める予定である。謝辞:

本技術開発の遂行、また、本稿を執筆するにあたり、香川大学 工学部知能機械システム工学科 鈴木孝明准教授に多大なご支援とご助言を頂いた。深く感謝の意を表します。

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