事業を通じた持続可能社会への貢献

事業を通じた
持続可能社会への貢献

基本的な考え方

ウシオは、創業から培った技術力を活かし、様々な製品を生み出してきました。
その背景には、光をあやつるコア技術の蓄積と社会課題の察知力が強く関係しています。ウシオはこれからも、コア技術を活かし、社会課題の解決に向けてソリューションを提供することで、人々の幸せと社会の発展を支えていきます。

新規事業創出に向けた三位一体体制

新たな価値の創造と提供の実現に向けて、研究開発機能だけでなく、マーケティング機能、知財機能も一体となった事業創出本部とすることで社会課題解決を目的とした新規事業創出を加速します。

社会的価値の大きい事業創出事例

事例1.気候変動対策

温室効果ガスの削減に向けた技術開発を推進

気候変動対策においては、「地上炭素ネットゼロと、人々の幸せを両立できる世界」をビジョンに掲げ、光や放電の利活用による気候変動の緩和の実現を目指しています。
現在は温室効果ガスの削減に向け、炭素や窒素の循環を考えた気候変動対策テーマを複数選定。いずれのテーマも多くの企業や団体と共創し、その事業化を推進しています。

亜酸化窒素の削減に向けた技術開発を推進

亜酸化窒素(地球温暖化係数が高いN₂O)の削減について、ウシオのエキシマ光を用いたN₂O分解に取り組んでいます。性能の向上や大学との連携も進み、国土交通省の「令和5年度下水道応用研究で実施する研究テーマ」に採択されています。

排水処理におけるガス分解リアクター導入イメージ
排水処理におけるガス分解リアクター導入イメージ

太陽電池の社会実装を推進

円筒型太陽電池の社会実装として、東京都の令和4年度「大学研究者による事業提案制度」に、ウシオも協力しこれを推進しています。また、太陽電池製造プロセスへの光の利用技術を通して、次世代太陽電池にも貢献すべく研究を行っています。

円筒型太陽電池の実証試験風景
円筒型太陽電池の実証試験風景

事例2.食料対策

持続可能な食料生産システムへ変革し、人類発展に十分な食料を安定供給する

世界人口は2050年までに約97億人に増加し、食料需要は大きく増加すると予想される一方で、水供給の限界、農地開発や化学肥料の地球温暖化への影響もあり、深刻な食料不足も懸念されています。今後は、環境に配慮しながらも生産性を高める新しい食料生産の仕組みづくりが重要となります。ウシオではまず、代替タンパク質への利用価値の高い大豆の植物工場での生産を目指し、資源効率化・作物の高機能化のための光技術開発を進めています。今後も、どんな気候の国でも一年中、大量に生産し、食を提供できる仕組みづくりを目指していきます。

「完全人工光+液肥管理」の栽培状況
「完全人工光+液肥管理」の栽培状況

持続可能な陸上養殖システムの立ち上げに貢献し、世界の食料安定を実現する

現在、世界全体で魚を食べる人の割合が増えていることを背景に世界的に養殖の生産量を上げようとするトレンドが続いています。一方、日本国内では漁業従事者の高齢化などを理由に毎年の漁獲量が減少しており、そんな状況を少しでも改善できないかと立ち上がったのが、陸上養殖プロジェクトです。国内で減少している漁獲量改善のために、陸上での養殖を検討している大企業と連携し、課題解決に取り組んでいます。ウシオは得意分野である光技術の応用によって日本及び世界の食料安定や陸上養殖の普及に貢献していきます。

魚の光応答性研究の様子
魚の光応答性研究の様子

事例3.健康寿命の延伸

OoC(Organs on Chip)
創薬のスピードアップを実現するプラットフォームを提供

新薬開発の競争激化や最新のバイオ医薬品への移行など、製薬企業における創薬難易度は年々上昇しており、開発期間の短縮や効率的な創薬試験の利用は製薬企業において重要な課題となっています。また、2022年末には、動物試験を必須とせず、代替法でも新薬申請に使用できるようにするFDA近代化法2.0※1が米国で可決されるなど、OoC※2にとって追い風が吹く状況でもあります。
そのような中、OoCプロジェクトでも欧米日の製薬企業に向けた展開を進めており、大手製薬企業数社より大きな売り上げにつながる可能性のある引き合いを得るに至っています。また、製薬企業が参加する国内外のOoC関連イベントに協賛し、開発アイテムやチップ工房※3の取り組みについて展示を行うなど認知活動も積極的に進めています。
国内では、AMED※4のOoCに関する実用化事業に、東北工業大学を中心としたグループで参画し、OoCメーカーとしてのポジションを確立し、ここでは、製薬企業を含む産学官の連携体制でOoCの社会実装に向けた取り組みを進めています。経済産業省の報告書※5でもOoCの国産メーカーとしてウシオの名が挙げられるなど、国内外の主要製薬企業にウシオのOoCへの取り組みが認知され始めています。

  • ※1 FDA(アメリカ食品医薬品局)Modernization Act 2.0
  • ※2 OoC:Organs on Chip(生体模倣システム)
  • ※3 製薬企業のオリジナルチップを対話を通じて共同開発するサービス
  • ※4 AMED:国立研究開発法人日本医療研究開発機構
  • ※5 第2回「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」中間評価検討会
OoC(Organs on Chip)創薬のスピードアップを実現するプラットフォームを提供

事例4.DXの実現に貢献する注力分野

バッテリー製造プロセス
ウシオの表面処理技術で性能向上に貢献

リチウムイオンバッテリーは、複数の異なる材料が組み合わされて製造されます。それらの材料のうち、正極アルミ集電箔に対して、ウシオの表面処理技術であるエキシマ(VUV)及び大気圧プラズマ(AP)を適用した結果が右下の図です。未処理に比べ、VUV/AP処理したものの放電容量が大きくなっていることが分かります。
これは、VUV/AP処理の洗浄効果によるものであり、電気自動車の航続距離向上に貢献します。今後は、全固体電池をはじめとする次世代電池向けのプロセス開発を行い、製造技術及び性能向上に貢献していきます。

表面処理による電池性能の向上例
表面処理による電池性能の向上例

半導体サーマルプロセス
半導体製造プロセスの省エネ化に貢献

半導体の高性能化に伴い、その製造プロセスに必要な消費電力は増大しており、省エネ化が強く求められています。
そこでウシオは、加熱プロセスにおいて特定の材料とLED加熱とを組み合わせることで省エネ化ができることを実証し、国際学会で発表しました。右下の図は、次世代メモリ材料として期待される強誘電体の加熱プロセスにおける消費電力の比較で、従来のハロゲンランプ(HL)に対してLEDを用いることで大幅な省エネ化の可能性があることを示しています。今後も、省エネ化にとどまらず光加熱の可能性を追求し、次世代半導体製造プロセスへの貢献を目指していきます。

強誘電体加熱プロセスでの消費電力比較

環境配慮型製品の方針

気候変動への影響は、事業全体に及びます。特にウシオのようにエネルギーを利用する製品を提供しているメーカーは、製品の使用による気候変動への影響の割合が高くなる傾向にあり、これは大きなリスクになります。しかし、様々な企業が気候変動に取り組む状況の中、気候変動への影響がより少ない製品を開発すれば、お客様に選ばれる機会になると考えます。
ウシオは安全・安心・環境配慮型ソリューションの創出をテーマに、この対象範囲を「製品、開発、サービスを含む全事業領域」へと拡大してきました。省エネルギーに寄与する環境配慮型設計や開発を推進するため、ウシオ独自のスーパーグリーン製品の認定基準の一つとして省エネルギー化の項目を設け、認定製品の販売促進により省エネルギーへの貢献も継続的に進めてきました。
マテリアリティとして2023年度以降も、製品使用時のCO₂排出量の削減について引き続き重点課題として取り組みを継続していきます。スーパーグリーン製品の開発をはじめ、省エネ型の製品開発を今後とも進めてまいります。

環境配慮型製品開発によるCO₂削減に関する計画と実績

計画 達成状況※ 実績
2022年度 SCOPE3 カテゴリ11※1 CO₂排出量 2017年度比12.7%削減(SBTi目標) SCOPE3 カテゴリ11※1 CO₂排出量を2017年度比で計画以上に削減
SCOPE3の2030年の目標値に向け、グループ全体の2017年度の対象製品のCO₂排出量を把握
SCOPE3グループ全体の2017年度の対象製品のCO₂排出量を把握。精度向上を実施
スーパーグリーン製品の基準を厳格化し、新基準でのGP・SG比率※2の向上を継続
スーパーグリーン製品の基準を厳格化し、新基準でのGP・SG比率※2の向上を継続
SCOPE3の対象となる2017年度のグループ全体の基礎データから、SBTiのガイドラインに沿った妥当性のあるCO₂排出量の算出方法を確立
SCOPE3の対象となる2017年度のグループ全体の基礎データから、SBTiのガイドラインに沿った妥当性のあるCO₂排出量の算出方法を2023年度完了目途に検討中
2023年度 SCOPE3 カテゴリ11※1 CO₂排出量 2017年度比15.3%削減
スーパーグリーン製品の基準を厳格化し、新基準での環境配慮型製品アセスメントの実施率と登録審査の割合100%
GP製品比率70%以上、SG製品比率10%以上
SCOPE3の対象となる2017年度のグループ全体の基礎データから、SBTiのガイドラインに沿った妥当性のあるCO₂排出量の算出方法の確立(第三者検証受審)
中長期
2030年度:
ウシオグループSCOPE3CO₂排出量 2017年度比33%削減
2025年度:
SBTiのSCOPE3 CO₂排出量 2017年度比20%削減
  • ※1 GHGプロトコルに定義されたSCOPE3 Category 11対象製品のCO₂排出量
  • ※2 新製品開発時のアセスメント総件数に占めるグリーンプロダクト製品率、スーパーグリーン製品比率

※◯:達成、✕:未達

環境配慮型製品への取り組み

ウシオでは、設計標準に「環境配慮型製品アセスメントマニュアル」を組み込むことで、設計段階より製品が環境に与える影響を事前評価しています。この評価を基に、環境性能を向上させた製品を「環境配慮型製品」として認定しています。さらに環境配慮型製品の中でも優れたもので、既存製品とは一線を画した革新的環境対応技術を採用した製品を「スーパーグリーン製品」として認定しています。

ウシオの環境配慮型製品の体系

スーパーグリーン製品の開発

ウシオは環境配慮型製品の創出に取り組み、ウシオ独自の認定基準に基づき、環境対応技術を積極的に採用した製品を、ウシオの「スーパーグリーン(SG)製品」として認定しています。SG製品は、「省エネ」「長期使用」「3R設計」「使用材料」「アプリケーション」などで優れた環境配慮がなされたトップランナー製品であるほか、「ウシオ環境ファクター」による数値基準をクリアしたもので、現在は数多くの製品が認定されています。

スーパーグリーン製品の評価項目

SG製品認定の基準は、次の3つの要件で構成されています。

①環境配慮型製品基準で80点以上(環境配慮型製品アセスメント基準に基づく)
②環境ファクター1.5以上(2015年度を基準年とし、従来製品との比較で計算)
③透明性の確保

環境ファクター

環境ファクターは、対象製品の環境効率/基準年度の同種製品の環境効率で算出しています。また、ウシオでは製品の環境効率を、製品の価値(性能)/環境負荷量で計算しています。製品の価値とは(出力×寿命)で算出し、環境負荷量は√[(入力)²+(3R量)²+(化学物質含有量)²]で計算します。

*1 出力:ランプであれば必要波長領域における光出力、照度など
*2 入力:製品使用時におけるエネルギー使用量
*3 3R量:製品の大きさ・重量(使用している資源の量)
*4 化学物質含有量:環境リスク物質の含有量例えば、環境ファクター数値がαの場合、製品の基準年度に対する改善度合いは以下を示します。
・製品の環境負荷が同じであれば、性能がα倍にアップ・製品の性能が同じであれば、環境負荷が1/αに削減

環境配慮型製品(グリーンプロダクツ)の取り組み

ウシオは製品設計において、環境配慮型製品アセスメントを義務づけしています。環境配慮型製品アセスメントの基準で60点以上をクリアし、環境ファクターの向上などの必要項目を満たした製品を環境配慮型製品(グリーンプロダクツ)として認定しています。

LCA(ライフサイクルアセスメント)の取り組み

LCAとはLife Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)の略で、原材料調達から製造、使用、リサイクル、そして最終的な廃棄処分にわたって、製品の使用する資源やエネルギーと、製品が排出する環境負荷を定量的に推定・評価し、さらに製品の潜在的な環境影響を評価する手法です。

LCAの実施

どんなに工場でのCO₂排出量を削減したとしても、作った製品を実際にお客さまが使用されるときに排出するCO₂が増えたのでは意味がありません。また、お客さまにとっても使用する製品が省エネ製品であればコスト、環境の両面でメリットが生まれます。そこで、製品・サービスのライフサイクル全体(ゆりかごから墓場まで)の環境負荷の定量化を行いました。ウシオでは、2006年度にLCAのガイドラインを作成し、LCAを実施対応してきました。

製品LCA情報

産業用から照明、ビジネス分野まで幅広い分野で使われるウシオグループの製品は、そのライフサイクルの広い局面で環境負荷を作り出しています。その全体像をライフサイクルのステージごとに、数値で把握し、環境に配慮した各種対策を講じることで、社会全体の環境負荷を低減する努力を続けています。このように環境を通じて社会に貢献しようと取り組んでいるウシオグループの環境配慮に対する取り組みの一端として、オフィスや一般家庭などでも使われることが多い、プロジェクタに搭載される放電ランプおよびその点灯電源のLCA評価結果を示します。これらの評価結果は製品設計、製造工程の改善、社内の環境教育等に活用されています。

LCA取り組みの具体例

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)
データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)

ランプ1本のライフサイクルにおける各ステージ別CO₂排出量を算出した事例です。 使用段階でのCO₂排出量は全ライフサイクルの約98%を占めており、電力による負荷が大きいことが分かります。次に大きいのは製品を構成する素材で約1.5%を占め、その内訳で大きいものはリフレクタや前面ガラス等のガラス材料による負荷です。評価結果からは特に使用時のCO₂排出量が大きいことが分かります。改善策として省エネタイプのランプ開発が重要です。

対象商品:データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(直流点灯 300W)
使用期間:1500時間
商品の流れ:素材 → 製造(工場)→ 流通 → 使用 → 廃棄

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ点灯電源

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)

点灯電源1台のライフサイクルにおける各ステージ別CO₂排出量を算出した事例です。製品を構成する素材ステージのCO₂排出量は全ライフサイクルの約54%を占めており、その素材内訳の中でトランジスタやダイオード等の半導体素子が主な負荷になっています。次に大きいステージは使用段階で、全体の約45%を占めています。使用段階のステージは負荷損失をCO₂排出量に換算して算出しています。この評価結果から素材や使用段階でのCO₂排出量が大きいことが分かります。改善策は環境負荷の少ない半導体素子の選定、電源回路の改善による環境負荷の大きい素子数の低減、点灯電源の効率向上(省エネ技術の開発)等が考えられます。

対象商品:データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(交流点灯NSHA 230W)用点灯電源
使用期間:11750時間(1日当たり3.5時間、年間100日で5年間の使用とする。社団法人産業環境管理協会エコリーフプログラム・データプロジェクタPSC(番号AG-03)による。)
商品の流れ:素材 → 製造(工場)→ 流通 → 使用 → 廃棄

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

※本電源は海外で生産しているため、輸送ステージを除いています。
※同上の理由で、CO₂換算原単位値は日本国内生産での値を採用しています。

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