事業を通じた持続可能社会への貢献

事業を通じた
持続可能社会への貢献

基本的な考え方

ウシオは、創業から培った技術力を活かし、様々な製品を生み出してきました。
その背景には、光をあやつるコア技術の蓄積と社会課題の察知力が強く関係しています。ウシオはこれからも、コア技術を活かし、社会課題の解決に向けてソリューションを提供することで、人々の幸せと社会の発展を支えていきます。

新規事業創出をより確実にするための体制へ

「光」を活用したイノベーションを社会に提供することを目的とし、よりウシオの強みが発揮できる領域にリソースを集中し、事業化までの期間短縮と成功確率向上のための体制を構築します。
具体的には、ウシオのコア技術を創り、強みが活かせる用途開発を担う研究開発機能に加え、開発した商品やサービスを顧客・市場に適合させるための事業開発機能を強化します。
研究開発と事業開発の2軸で各開発テーマを継続的に評価し、ウシオの強みが活かしにくいものについてはStopするなど、前年度から進めているテーマの選択とリソースの集中をより厳格に進めていきます。
・技術開発の成果をより明確なビジネスに結びつけるために、事業戦略との連携強化を行う。
・ウシオの強みを最大限発揮し、リソースを効率的に活用して期待されるリターンを得る為に、過去の技術ノウハウや資産活用の視点を強化する。
・より多くの可能性を探るために、新規事業創出における多産多死プロセスを促進する。
上記により光による社会価値の創出を実現して参ります。

光による社会価値の創出を実現する事業創出事例

事例1.OoC

創薬のスピードアップを実現するプラットフォームを提供「OoC(Organs on Chip)」

医薬品開発では臨床試験前に動物実験を行い薬効や安全性の評価を行いますが、その後の臨床試験で副作用が発生し、開発が中止されるケースがあります。また、動物実験には倫理的な問題もあるため、代替法としてヒト由来細胞を使用し、チップ上に臓器に近い機能を再現できる生体模倣システム(OoC)の開発が世界的に進められています。
ウシオのOoCは、172nmの真空紫外光による表面改質効果を利用して、接着剤を使用せず直接接合することができます。これにより、ソルベントなどを用いた他の接着剤フリー接合に比べて化学的溶出物のないクリーンなチップ製作が可能になります。また、光学部 品開発で培った微細加工技術を活用し、マイクロ流路を樹脂上に形成しています。
上記技術を応用し、既に上市を開始している神経細胞向けのチップがあります。このチップでは、神経細胞から伸長した神経突起がマイクロ流路に沿って伸びることで、均一な神経突起の形成が得られます。さらに、これらの神経突起の画像データをAIによる画像解析 にかけることで、学習済みの薬剤障害時の特徴と比較し、神経障害リスクを定量評価することができます。
現在、大手製薬企業数社と提携し事業化を見据えたビジネス展開を進める状況に至っています。また、国内ではAMED※1のOoC実用化プロジェクトに参加しており、OoC実用化・社会実装の推進を目指した取り組みを進めています。
ウシオは、これらのOoC技術で新薬開発の課題解決に貢献します。

  • ※1 AMED:国立研究開発法人日本医療研究開発機構

事例2.N₂O分解

温室効果ガス(N₂O)の削減技術

温室効果の主要因である二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N₂O)のうち、ウシオではこの中でも温室効果が高いN₂Oの削減技術の研究開発を進めています。
ウシオでは波長172nmの紫外光を放射するエキシマランプの「光」によってN₂Oの分解に取り組んできました。しかし、ランプを点灯するために多大な電力を消費し、その電力のために多大なCO₂を排出していては環境的な収支がマイナスとなります。そこで、ランプに創意工夫を加え、常温・常圧下におけるN₂Oの分解効率を向上させました。加えて、高価な触媒等を使用しないため、ユーザのコスト負担も軽減されます。
また、N₂Oの排出源は希薄な濃度であることが多いため、N₂Oを濃縮することでランプの使用本数を低減することが可能です。そこでウシオでは従来困難と言われてきたN₂Oの濃縮技術に協業先と取り組み、高い濃縮率を得る方法を発明。N₂Oの排出権取引への 登録も視野に、システム全体の経済的な収支の可能性も見出しつつあります。

国土交通省下水道応用研究に採択

下水道への実装を目指して進めてきた本研究も2年目となりました。N2O分解の取り組みは、令和5年度より国土交通省の下水道応用研究に採択され高い評価を得ています。今後、下水道を含め様々な場面での社会実装を見据え、スケールアップを目指し研究と事業開発を推進します。
ウシオは、「地上炭素ネットゼロと人々の幸せの両立」を目指して、ウシオの技術で温暖化抑制に貢献します。

事例3.干渉露光

これからの光システムを支える超高精度露光装置

近年ポストスマートフォンとして注目されるXRシステム、情報量増大に伴い期待が高まる光電融合システムの発展と浸透、これらの光システムを実現するためには、精密な微細構造を有する高機能な光源、光学部品が不可欠です。このニーズに応えるべく、ウシオでは、超高精度な露光装置を開発しています。

段差不問・全面シームレスパターニングが可能

ウシオは、全く新しい干渉露光装置を提案します。実績のある半導体製造用露光装置で培った技術力を基盤に革新的な干渉露光技術を導入することによって、環境・振動に対する安定性と、高度に自動化された量産性に優れる露光ソリューションを提供します。
円弧状に移動する2つの光路アーム、及び露光面には2nmの分解能を誇る高精度なウェハステージを備えており、さらにAIによりユニット同士が高度に自動化されています。この全く新しい斬新な装置コンセプトにより、ウェハ全面で完全にシームレスな高品質パターンの形成が可能です。

環境配慮型製品の方針

気候変動への影響は、事業全体に及びます。特にウシオのようにエネルギーを利用する製品を提供しているメーカーは、製品の使用による気候変動への影響の割合が高くなる傾向にあり、これは大きなリスクになります。しかし、様々な企業が気候変動に取り組む状況の中、気候変動への影響がより少ない製品を開発すれば、お客様に選ばれる機会になると考えます。
ウシオは安全・安心・環境配慮型ソリューションの創出をテーマに、この対象範囲を「製品、開発、サービスを含む全事業領域」へと拡大してきました。省エネルギーに寄与する環境配慮型設計や開発を推進するため、ウシオ独自のスーパーグリーン製品の認定基準の一つとして省エネルギー化の項目を設け、認定製品の販売促進により省エネルギーへの貢献も継続的に進めてきました。
マテリアリティとして2023年度以降も、製品使用時のCO₂排出量の削減について引き続き重点課題として取り組みを継続していきます。スーパーグリーン製品の開発をはじめ、省エネ型の製品開発を今後とも進めてまいります。

環境配慮型製品開発によるCO₂削減に関する計画と実績

計画 達成状況※ 実績
2023年度
SCOPE3 カテゴリ11※1 CO₂排出量 2017年度比15.3%削減
SCOPE3 カテゴリ11※1 CO₂排出量を2017年度比で55.17%削減
スーパーグリーン製品の基準を厳格化し、新基準での環境配慮型製品アセスメントの実施率と登録審査の割合100%
スーパーグリーン製品の基準を厳格化し、新基準でのGP・SG比率※2の向上を継続
GP製品比率75%以上、SG製品比率10%以上
2023年度新規開発製品のGP製品比率81%、SG製品比率22%を達成
SCOPE3の対象となる2017年度のグループ全体の基礎データから、GHGプロトコルのガイドラインに沿った妥当性のあるCO₂排出量の算出方法の確立(第三者検証受審)
2017年度を基準年度にグループ全体の基礎データからSCOPE3についてGHGプロトコルのガイドラインに沿ってCO₂排出量を算出し、第三者検証による認証を取得
2024年度
SCOPE3 カテゴリ11※1 CO₂排出量 2017年度比17.5%削減
グループ統一環境配慮型製品アセスメントと環境ファクター計算に基づくGP・SG製品基準の導入と段階的運用開始
グループ統一環境配慮型製品アセスメントによるGP製品比率75%以上、SG製品比率10%以上
SCOPE3の対象となる2017年度のグループ全体の基礎データから、GHGプロトコルのガイドラインに沿った妥当性のあるCO₂排出量の算出並びに第三者検証の認証取得
中長期
2030年度:
ウシオグループSCOPE3 CO₂排出量 2017年度比33%削減
2025年度:
SBTiのSCOPE3 CO₂排出量 2017年度比20%削減
  • ※1 GHGプロトコルに定義されたSCOPE3 カテゴリ11対象製品のCO₂排出量
  • ※2 新製品開発時のアセスメント総件数に占めるグリーンプロダクト製品率、スーパーグリーン製品比率

※◯:達成、✕:未達

環境配慮型製品への取り組み

ウシオでは、設計標準に「環境配慮型製品アセスメントマニュアル」を組み込むことで、設計段階より製品が環境に与える影響を事前評価しています。この評価を基に、環境性能を向上させた製品を「環境配慮型製品」として認定しています。さらに環境配慮型製品の中でも優れたもので、既存製品とは一線を画した革新的環境対応技術を採用した製品を「スーパーグリーン製品」として認定しています。

ウシオの環境配慮型製品の体系

スーパーグリーン製品の開発

ウシオは環境配慮型製品の創出に取り組み、ウシオ独自の認定基準に基づき、環境対応技術を積極的に採用した製品を、ウシオの「スーパーグリーン(SG)製品」として認定しています。SG製品は、「省エネ」「長期使用」「3R設計」「使用材料」「アプリケーション」などで優れた環境配慮がなされたトップランナー製品であるほか、「ウシオ環境ファクター」による数値基準をクリアしたもので、現在は数多くの製品が認定されています。

スーパーグリーン製品の評価項目

SG製品認定の基準は、次の3つの要件で構成されています。

①環境配慮型製品基準で80点以上(環境配慮型製品アセスメント基準に基づく)
②環境ファクター1.5以上(2015年度を基準年とし、従来製品との比較で計算)
③透明性の確保

環境ファクター

環境ファクターは、対象製品の環境効率/基準年度の同種製品の環境効率で算出しています。また、ウシオでは製品の環境効率を、製品の価値(性能)/環境負荷量で計算しています。製品の価値とは(出力×寿命)で算出し、環境負荷量は√[(入力)²+(3R量)²+(化学物質含有量)²]で計算します。

*1 出力:ランプであれば必要波長領域における光出力、照度など
*2 入力:製品使用時におけるエネルギー使用量
*3 3R量:製品の大きさ・重量(使用している資源の量)
*4 化学物質含有量:環境リスク物質の含有量例えば、環境ファクター数値がαの場合、製品の基準年度に対する改善度合いは以下を示します。
・製品の環境負荷が同じであれば、性能がα倍にアップ・製品の性能が同じであれば、環境負荷が1/αに削減

環境配慮型製品(グリーンプロダクツ)の取り組み

ウシオは製品設計において、環境配慮型製品アセスメントを義務づけしています。環境配慮型製品アセスメントの基準で60点以上をクリアし、環境ファクターの向上などの必要項目を満たした製品を環境配慮型製品(グリーンプロダクツ)として認定しています。

LCA(ライフサイクルアセスメント)の取り組み

LCAとはLife Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)の略で、原材料調達から製造、使用、リサイクル、そして最終的な廃棄処分にわたって、製品の使用する資源やエネルギーと、製品が排出する環境負荷を定量的に推定・評価し、さらに製品の潜在的な環境影響を評価する手法です。

LCAの実施

どんなに工場でのCO₂排出量を削減したとしても、作った製品を実際にお客さまが使用されるときに排出するCO₂が増えたのでは意味がありません。また、お客さまにとっても使用する製品が省エネ製品であればコスト、環境の両面でメリットが生まれます。そこで、製品・サービスのライフサイクル全体(ゆりかごから墓場まで)の環境負荷の定量化を行いました。ウシオでは、2006年度にLCAのガイドラインを作成し、LCAを実施対応してきました。

製品LCA情報

産業用から照明、ビジネス分野まで幅広い分野で使われるウシオグループの製品は、そのライフサイクルの広い局面で環境負荷を作り出しています。その全体像をライフサイクルのステージごとに、数値で把握し、環境に配慮した各種対策を講じることで、社会全体の環境負荷を低減する努力を続けています。このように環境を通じて社会に貢献しようと取り組んでいるウシオグループの環境配慮に対する取り組みの一端として、オフィスや一般家庭などでも使われることが多い、プロジェクタに搭載される放電ランプおよびその点灯電源のLCA評価結果を示します。これらの評価結果は製品設計、製造工程の改善、社内の環境教育等に活用されています。

LCA取り組みの具体例

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)
データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)

ランプ1本のライフサイクルにおける各ステージ別CO₂排出量を算出した事例です。 使用段階でのCO₂排出量は全ライフサイクルの約98%を占めており、電力による負荷が大きいことが分かります。次に大きいのは製品を構成する素材で約1.5%を占め、その内訳で大きいものはリフレクタや前面ガラス等のガラス材料による負荷です。評価結果からは特に使用時のCO₂排出量が大きいことが分かります。改善策として省エネタイプのランプ開発が重要です。

対象商品:データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(直流点灯 300W)
使用期間:1500時間
商品の流れ:素材 → 製造(工場)→ 流通 → 使用 → 廃棄

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ点灯電源

データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(NSHランプ)

点灯電源1台のライフサイクルにおける各ステージ別CO₂排出量を算出した事例です。製品を構成する素材ステージのCO₂排出量は全ライフサイクルの約54%を占めており、その素材内訳の中でトランジスタやダイオード等の半導体素子が主な負荷になっています。次に大きいステージは使用段階で、全体の約45%を占めています。使用段階のステージは負荷損失をCO₂排出量に換算して算出しています。この評価結果から素材や使用段階でのCO₂排出量が大きいことが分かります。改善策は環境負荷の少ない半導体素子の選定、電源回路の改善による環境負荷の大きい素子数の低減、点灯電源の効率向上(省エネ技術の開発)等が考えられます。

対象商品:データプロジェクタ用高輝度放電ランプ(交流点灯NSHA 230W)用点灯電源
使用期間:11750時間(1日当たり3.5時間、年間100日で5年間の使用とする。社団法人産業環境管理協会エコリーフプログラム・データプロジェクタPSC(番号AG-03)による。)
商品の流れ:素材 → 製造(工場)→ 流通 → 使用 → 廃棄

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

ライフサイクルの各ステージ別CO₂排出量

※本電源は海外で生産しているため、輸送ステージを除いています。
※同上の理由で、CO₂換算原単位値は日本国内生産での値を採用しています。

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