シール(封止)
解説
シール(封止)とは、ランプの導電部材(金属)と発光管(ガラス管)を気密封止すること。封着とも言う。
その種類には、ピンチシール、シュリンクシール、フリットシール、グレーデッドシール、モリブデン(箔)シール、ジュメット(ワイヤ)シールなどがある。
※金属とガラスを封止(封着)する条件として、金属の融点がガラスの作業温度より高く、金属とガラスが互いに濡れること。更に、一般には、熱膨張・熱収縮による封止破壊を防ぐため、金属とガラスの熱膨張係数が一致していることがある。熱膨張係数が一致しない場合には、グレーデッドシールが使われ、熱膨張係数の差を埋めるために、ガラスと金属の間に何段かの中間の熱膨張係数を持つガラスを介し、気密封止を行っている。また、モリブデン箔シールでは、モリブデン(Mo)の薄い箔をガラスに埋め込み、両者の熱膨張係数の差をMo 箔の塑性変形で吸収することが行われている。
シール方法の代表的な例
ピンチシール(pinch seal)
発光管(ガラス管)に導電部材(金属)を挿入し、加熱しながら外部から力を加え、ピンチすることで封止する方法。ネオンランプ、ハロゲン電球、比較的小型の放電ランプなどの封止に多く使われる。ピンチシールでは、一般にシール部の形状は扁平になる。
シュリンクシール(shrink seal)
封止加工前には、封止部の発光管(ガラス管)の内径が導電部材(金属)外径より太い構造で、封止加工時にバーナーなどで加熱しながら発光管(ガラス管)の封止部の径を小さくして、導電部材に密着させる封止方法。シュリンクシールでは、一般にシール部の形状は円柱状になる。
グレーデッドシール(graded seal)
発光管(ガラス管)と導電部材との熱膨張率が異なる場合に、発光管(ガラス管)と導電部材の熱膨張率の差を補償するために、熱膨張率が少しずつ異なるガラスを段階的につなぎ合わせる封止方法。キセノンショートアークランプでは、導電部材にタングステンリード棒を用い、このリード棒と石英ガラスの間を、熱膨張率が少しずつ異なるガラスを段階的につなぎ合わせて熱膨張率の差を補償し、気密封止(段継シール部)している。このため段継シールとも呼ばれる。
モリブデン箔シール(molybdenum(thin) foil seal)
導電部材にモリブデン金属箔を使う封止方法。発光管(ガラス管)のシール部に導電部材としてモリブデン(Mo)の薄い箔を埋め込み、封止し、ガラスと金属の熱膨張係数の差をMo 箔の塑性変形で吸収している。放電ランプでは、水銀を使っている超高圧水銀ランプや低圧水銀ランプなどで、導電部材から外部への熱の流出が少なく、水銀の蒸発の妨げにならないことから、多く用いられる。また、500W 程度以下のキセノンショートアークランプ、ハロゲン電球でも採用されている。モリブデンシール、箔シールと呼ぶこともある。
フリットシール(frit seal)
導電部材(金属)と発光管(ガラス管)を気密封止するに、封止ガラス(低融点ガラスペースト)を用いる封止方法。
※封止ガラスとは、金属とガラスのような異なる材料間の電気的絶縁や気密封着を目的とした固着のために使われ、ブラウン管(CRT)では鉛ガラスが使われるが、多くはホウケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラスに属する封止ガラスが使われる。そのためシーリングガラスシールとも呼ばれる。
※シーリングガラスとは、気密の目的で部品に充填する材料で、施工時には粘着性のある不定形材料の総称であり、封止ガラスと同義語である。
ジュメット(ワイヤ)シール(Dumet(wire) seal)
ジュメット線(Dumet wire)を導電部材として、軟質ガラスの発光管をバーナーなどによる加熱で溶着し、封止する封止方法。
※ジュメット線とは、鉄ニッケル合金線を心材とした銅線(銅被覆鉄ニッケル合金線)のことで、白熱電球や冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、ダイオードなどの軟質ガラス封止部の導電部材(リ-ド線)に用いられる。