紫外放射
解説
紫外放射とは、波長が約1nmから360~400nmの放射であり、一般に紫外線と言われている。
紫外線(赤外線)と言う用語は、かつて英語の専門用語として使われていたultraviolet rays
(infrared rays)に対応して造られたものであったが、その後、「ray」の表現が、電磁波の実体を表
すには適切ではないとされ、「radiation」=「放射」に変更された。
また、日本では、以前は「radiation」に「輻射」を当てていたが、今日では「放射」としている。
国際照明委員会(CIE)における紫外放射(紫外線)の波長による分類には、以下のような分け方
がある。
- UV-A : 波長315~400nmの範囲
- UV-B : 波長280~315nmの範囲
- UV-C: 波長100~280nmの範囲
近紫外放射
可視域に隣接した波長域の紫外放射のこと。
概ね、波長で300~320nmから380~400nmの範囲。
中紫外放射
遠紫外放射(真空紫外放射)より長波長で、近紫外より短波長の紫外放射のこと。
概ね、波長で200~220nmから300~320nmの範囲。
遠紫外放射
空気による吸収が始まる波長域から最短波長までの範囲の紫外放射のこと。「真空紫外放射」とも言う。
概ね、波長で1nmから200~220nmの範囲。また、より長波長域まで含めて、250nmくらいまで含める場合もある。
極端紫外放射
概ね、波長で1~10nm程度の範囲の紫外放射のこと。「極紫外」と言うこともある。
半導体の露光分野では、波長13.5nmの光を「極紫外」もしくは「極端紫外」と言う。
上記以外にも、紫外放射(紫外線)の波長による分類が存在する。光化学効果などの紫外線を含めた光放射の応用では、波長によって表現する方が正確である。
例を挙げれば、深紫外放射がある。深紫外放射の波長域に諸説あるが、概ね250、300、350nm 以下の紫外放射を深紫外放射またはディープUV(Deep-UV、DUV)と呼ぶことがある。この言葉は、もともとIBM のDr.Lin が使った言葉で、彼の概念では、200~300nm の波長域をさす。この波長範囲(200~300nm)は、概ね200~220nm から300~320nmの中紫外放射と重なる。
※高エネルギーの紫外放射を利用することで、常温・大気圧下で様々な化学反応効果が得られる。
〈 代表的用途例 〉
- キュアリング(光硬化)
超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ディープUVランプ、メタルハライドランプを使用し、インキなどの瞬間乾燥・硬化、電子部品や光学部品などの微小面精密接着、レジスト硬化、液晶パネルの貼り合わせなど。
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リソグラフィ(露光)
超高圧水銀ランプ、エキシマレーザ、EUVを使用し、半導体、液晶などの回路パターン形成。
- 表面改質
高エネルギーをもつ短波長の真空紫外光(波長200nm以下)を使用し、ガラスやウェハ、プラスチックなどの表面の親水性、疎水性など、物理特性を変える。
- 光洗浄
波長200nm以下の遠紫外放射(真空紫外放射)による、ガラスやウェハなどの物質表面に付着した有機物の除去。
- レジスト剥離(アッシング)
波長200nm以下の遠紫外放射(真空紫外放射)による、ウェハ上の不要なレジスト(有機物)の分解・除去。
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光CVD
紫外放射を利用した化学反応によって、薄膜を形成する。
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光治療
紫外放射の特定の波長と、それに反応する薬品を組み合わせることで人体に化学反応をおこし、皮膚疾患などを治療する。
症状によっては、可視放射や赤外放射を使用することもある。
- 水殺菌/空気殺菌/表面殺菌
殺菌効果の強い紫外放射(波長250~260nm)を使用し、食堂などの調理室、病院、薬品工場などに広く使用されている。